非倫理性・象徴性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/02 16:01 UTC 版)
「秘密集会タントラ」の記事における「非倫理性・象徴性」の解説
内容を特徴付ける主な言葉・概念を挙げると、以下のようなものがある。 「五欲徳」(色・声・香・味・触) 「五肉」(人肉・牛肉・犬肉・象肉・馬肉) 「五甘露」(糞・尿・精液・経血・肉体または油) 「大印(mahāmudrā)」(女性パートナー) こういった従来の顕教、あるいは世俗の社会倫理では忌避されてきたものを、真理の反映の過程として取り上げ、三昧の上においてはむしろ徹底的に享受・摂取することが、(その優越性・究極性を強調されつつ、)全面的に象徴化がなされ、それを肯定し推奨されて、現実の如く具体的に観想することが必要とされる。 ちなみに、「大印」(女性パートナー)は、言うまでもなく、「愛欲」(性理的瑜伽、二根交会)の象徴として文中に現れるが、その尊様の指定は、 十二歳の乙女(第七分、第十五分) 十六歳の乙女(第四分、第七分、第十六分) 二十五歳の乙女(第八分) といった具合にバラつきがある。 これらの言葉・概念と、 貪瞋痴 身語心 真言 五仏・明妃・五部族・忿怒尊 曼荼羅 三摩地・悉地 自性清浄・虚空・不生・無我・平等性・無分別(離分別) といった言葉・概念などが関連付けられつつ、観想法(成就法)・儀則が述べられていく。 上記のような非倫理的ないしは非戒律的(破戒的)な振る舞いについての記述は、観想上で行うものと解釈できる部分も少なくないが、例えば、第十二分の「五肉供養」のくだりでは、 あらゆる肉が手に入らねば、あらゆる肉を観想によって生ずべし。 と書かれており、このように、明らかに現実の実際的な振る舞いを求めているとしか捉えようのない部分もある 。そして、実際に中世のインドやチベットでは記述された内容を鵜呑みしてしまい、「性的ヨーガ」等が現実に実践されてきた例もある。また、タントラの「後半部」には「呪殺法」とも解釈され得る『調伏法』の様々な呪術の記述が頻出する点(古来から密教の儀軌類には普通に登場する記述)も併せて考えると、正しい理解と資格を伴った専門家が少ない創成期においては、これらの記述が単なる観想上でのみに留まっていた蓋然性はそれほど高くないと考えられる。
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