静岡中部の水源
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/01/22 15:01 UTC 版)
笹間川ダムは発電専用ダムであるが、隠れた役割を担っている。それは大井川流域の農業用水と上水道の供給を図ることである。 1947年(昭和22年)農林省(現・農林水産省)は全国に先駆け大井川において「国営農業水利事業」の施工を開始した。大井川流域に広がる茶畑と水田に農業用水を供給する大井川用水を建設して灌漑を図る計画が図られた。既に大井川では発電ダムが多く建設され、農業用ダムを建設する余地がなかったため発電に使用した後の河水に水源を求めることとなり、川口発電所の放流水に白羽の矢が立った。川口発電所直下流に川口取水口を建設、ここを大井川用水の水源として島田市神座にある神座分水工において大井川右岸・左岸へ用水路を分岐した。 右岸は島田市・焼津市・藤枝市・牧之原市・榛原郡吉田町へ5本の分水路を更に分岐させて用水を供給。左岸は神座より菊川に建設された菊川頭首工を中継し、掛川市・袋井市・菊川市・御前崎市に5本の分水路より用水を供給する。21年の歳月を掛け1968年(昭和43年)に完成した大井川用水は大井川両岸農地7,757haを潤す一大灌漑設備となった。 一方急激に増加する人口に対処するため焼津市・藤枝市・島田市・牧之原市・掛川市・菊川市・御前崎市の7市は「静岡県大井川広域水道企業団」を結成、川口取水口より上水道用の取水を開始し相賀浄水場を経由して日量518,400トンを利用している。さらに2003年(平成15年)に農業用水違法転用問題が発覚したことから工業用水道事業の本格参入が検討され、掛川市・菊川市・御前崎市・牧之原市は「東遠工業用水道事業企業団」を2005年(平成17年)に結成し、2006年(平成18年)末を目処に工業用水を供給する計画がなされている。 灌漑・上水道・工業用水道は長島ダムを主要な水源としているが、発電用の水も利用しているため井川ダムや畑薙第一ダムも間接的ではあるが水源となっている。そして笹間川ダムは川口発電所に直接送水するダムであることから、静岡県中部の重要な水源として利用されている。従ってこれらのダムが水不足によって貯水率が下落すると、給水制限のおそれがある。こうして大井川の水が高度に利用されたわけであるが、その代償として大井川本流の水量が激減。長年にわたって「水返せ運動」が繰り広げられた事は有名である。1997年(平成9年)の河川法改正で河川維持放流の義務化が明記されたことから、笹間川ダムでも維持放流用のバルブが設置された。現在は写真の様に常時放流をおこなっている。
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