電気素量の計測
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/20 01:55 UTC 版)
「ロバート・ミリカン」の記事における「電気素量の計測」の解説
1909年、教授を務めていたシカゴ大学で単一の電子の電荷量(電気素量)を計測する油滴実験を開始した。油滴実験の精度を高めるために水滴のかわりに蒸発の少ない油滴を使うという重要なアイデアは当時大学院生だったハーヴェイ・フレッチャーのものだったが、ミリカンは論文を単独名で発表した。その代わりとしてフレッチャーの学位論文はフレッチャーの単独署名とされた。ミリカンはこの業績などにより1923年のノーベル物理学賞を受賞。フレッチャーは亡くなるまでその密約を守り続けた。ミリカンはまず1910年に結果を公表したが、フェリックス・エーレンハフト(英語版)が矛盾する計測結果を発表し、両者の間で論争が起きた。その後ミリカンは装置の改良に取り組み、1913年にさらに正確な研究結果を公表している。 電気素量は基本的物理定数の1つであり、その値を正確に知ることは極めて重要だった。ミリカンらの実験は、2つの小さな電極間で帯電した小さな油滴を重力に逆らって宙に浮かせ、そのときにかかっている力を測定するものである。電場の強さがわかれば、小滴上の電荷を特定できる。多数の小滴で実験を繰り返し、電荷量が常に一定の値の整数倍になることを示した。その値 1.592×10-19クーロンが電子1個の電荷だとした。現在の電気素量は 1.60217653×10-19クーロンで、ミリカンがもちいた空気の粘度の値の誤差により若干の外れが生じたと考えられる。 ミリカンが油滴実験をしていたころ、原子がもっと小さい粒子から構成されていることが明らかになりつつあったが、誰もがそれを信じていたわけではなかった。1897年に、J・J・トムソンらが陰極線を構成する粒子の質量電荷比を測定し、水素イオン(陽子)の約1000倍~4000倍と見積もった。しかし、当時の電気と磁気に関する知識では、電荷を連続的な値として扱うことで説明できるレベルであり、それは光を光子の流れとしてではなく連続波として扱うことで説明がつくのと同様だった。 ミリカンの油滴実験の優れた点は、電気素量の正確な測定を可能にしただけでなく、電荷が実際には量子化された量であることを実地に示した点である。ゼネラル・エレクトリック社のチャールズ・スタインメッツは電荷は連続量だと信じていたが、ミリカンの装置を使ってみてミリカンの結果が正しいことを確信したという。
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