開発開始までの経緯と開発の加速
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 03:42 UTC 版)
「COVID-19ワクチン」の記事における「開発開始までの経緯と開発の加速」の解説
COVID-19の大流行に先立ち、重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)などの病気を引き起こすコロナウイルスの構造と機能に関する知識が確立されていた為、2020年初頭に様々なワクチン技術の開発を加速できた、とされた。2020年1月10日、SARS-CoV-2の遺伝子配列データがGISAIDを通じて共有され、同年3月19日までに、世界の製薬業界がCOVID-19への取り組みを大々的に発表した。 2020年代に入り、COVID-19は世界規模で急ピッチに広がりを見せたことから、各国の研究機関や医薬品メーカーは、新たなワクチンの開発や他のウイルス用に開発された既存ワクチンの再評価に乗り出した。世界保健機関(WHO)は、2020年5月までに世界で118の計画が進行中とするリストを公表。うち8の計画は、その時点で既に欧米や中華人民共和国(中国)で臨床試験の段階に入っていた。また、WHOはワクチン開発に各国が共同出資・購入する枠組み「COVAX(コバックス)」を立ち上げた。 なお、2020年6月時点では、「最初に開発されるワクチンについては、感染防止よりも重症化や死亡を防ぐタイプのワクチンを開発する可能性がある」などと報道されていた。また、高齢者にはワクチンが効きにくいと指摘する声もあった。 COVID-19用ワクチンの製造に当たり、新たな製造手法を模索する企業も現れた。これは、従来の鶏卵によるインフルエンザワクチンの生産手法を応用した場合、生産性が低いうえに時間がかかるというリスクがあること、また、卵に注入したウイルスが変異して、ワクチンの有効性が低下することも考えられるためである。具体的には、DNAワクチンやmRNAワクチンの開発が進められることとなった。 2020年5月時点で、WHO、感染症流行対策イノベーション連合(Coalition for Epidemic Preparedness Innovations, CEPI)、およびゲイツ財団(GF)は、COVID-19感染症の継続を防ぐためにいくつかのワクチンが必要になるという見通しのため、資金と組織のリソースを投入していた。ワクチン候補の迅速な投資と開発のために20億ドルの世界基金を組織しているCEPI は、2020年9月に、ライセンス取得を支援するための臨床データが同年末までに入手できる可能性があることを示した。2020年5月4日には、WHOが主催したテレソン(長時間特別番組)で、40カ国から81億ドルの誓約書が寄せられた。同時に、WHOは、第II/III相臨床試験に到達した複数のワクチン候補の同時評価のための国際的な「連帯試験」の展開も発表した。 2020年11月、バーレーンは中国のシノファーム社製ワクチンの緊急販売承認を与え、アラブ首長国連邦(UAE)がこれに続いた。12月には、バーレーンと英国が米ファイザー社製ワクチンを緊急時の使用を承認した一方、UAEとカナダは一般使用を承認した。
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