野口研究所案
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「只見特定地域総合開発計画」の記事における「野口研究所案」の解説
野口研究所案とは、日窒コンツェルン創始者である野口遵(のぐち・したがう)が私財を投じ設立した財団法人・野口研究所が策定した計画案である。戦前朝鮮半島における水力発電開発事業を行った経験から、戦後日本各地の大規模開発計画の調査・策定を手がけ、只見川の開発についても調査を実施し発表した。最大の特徴は大規模な水力発電もさることながら、水運の便を図るため日本海と太平洋を結ぶ運河を河川を利用して連絡させるという壮大なものであった。 この計画案では信濃川、阿賀野川、只見川、猪苗代湖、阿武隈川、鮫川の六河川を運河で連結し、東北地方を横断する形で日本海と太平洋の間を200トン級の船舶が運航できるようにすることが骨子であった。また水力発電については年間で90億キロワット時の電力を生み出し、合わせて林業・鉱業資源の開発を行うとした。この案によれば阿賀野川と只見川に2箇所、信濃川と阿武隈川、鮫川に各1箇所の超巨大ダムを建設し、各河川の支流にもことごとくダムを建設して水路で結び、効率的な発電を行うことが出来ると主張している。計画総出力は全ての案では最大の327万7000キロワットとなる。以下に計画案を示すが、ダム・貯水池の諸元は不明であるため割愛する。 河川発電所認可出力(kW)備考阿賀野川 若松 27,000 阿賀野川・鶴沼川合流点直下に建設する田島貯水池より導水 阿賀野川 阿賀野川 740,000 阿賀町・阿賀野市境付近に建設する阿賀野川貯水池より導水 只見川 湯之谷 410,000 現在の奥只見ダム付近に建設する奥只見貯水池より導水 只見川 沼沢沼 50,000 野尻川下流に建設する野尻貯水池と沼沢湖より導水 只見川 野沢 100,000 現在の会津桧原駅付近に建設する桧原貯水池より導水 信濃川 柏崎 480,000 長岡市・小千谷市境に建設する信濃川貯水池より導水 破間川 大白川 360,000 現在の破間川ダム地点に建設する破間第一貯水池より導水 破間川 小出 740,000 破間川・黒又川合流点に建設する破間第二貯水池より導水 阿武隈川 郡山 150,000 猪苗代湖より導水 鮫川 小名浜 220,000 現在の高柴ダム付近に建設する鮫川貯水池より導水 計 10 3,277,000 最大の貯水池となる阿賀野川貯水池は現在の東蒲原郡阿賀町と阿賀野市境界付近に建設され、湛水面積は奥只見湖の約6~7倍に相当しその上流端は只見川の合流点を越えて会津坂下町と喜多方市の境、濁川合流点付近にまで及ぶ。阿賀野川単独では貯水池が形成できないため、阿賀野川支流の早出川にもダムを建設 し二箇所のダムで貯水を行う。ここで出力74万キロワットの発電を行う。また只見川に建設される只見貯水池は現在の滝ダム付近に計画されたが、その上流端は現在の田子倉湖上流端及び南会津郡南会津町南郷付近にまで及び、貯水池規模も阿賀野川貯水池とほぼ同じである。この他信濃川は小千谷市と長岡市境付近、阿武隈川は西白河郡中島村滑津付近に大規模ダムが建設される計画であった。 しかしこの計画が実行されると、既に建設されていた宮下、新郷、山郷、豊実、鹿瀬の各発電所が完全に水没するほか、水没により移転を余儀なくされる住民数が膨大になることが予想された。
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