訴えの変更の要件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/06 21:44 UTC 版)
訴えの変更の要件は、以下のとおりである(143条1項)。 請求の基礎に変更がないこと 訴えの変更が認められるのは、請求の基礎に変更がない場合に限定されている。 この要件が要求される理由は、訴えの変更をある程度制限することで、訴えの変更によって生じる被告の防御の困難をある程度軽減することが挙げられる。また、従前の裁判資料を利用して審理の重複を避けられる場合に訴えの変更を認めるべきであるということも挙げられる。 請求の基礎という概念がどのようなものであるのかにつき、この要件の存在理由に関連して学説上争いがある。前後両請求の実体的性質に着目する説、裁判資料の流用可能性に着目する説、両者を要求する説がある。もっとも、各学説の具体的結論にはほとんど差がないとされる。 通説によると、被告側が同意または応訴した場合は、この要件の充足は不要である(最高裁判所昭和29年6月8日民集8巻6号1037頁参照)。 さらに、判例は、相手方の陳述した事実を新請求の原因とする訴えの変更では、請求の基礎の同一性は要求されないとする(最高裁判所昭和39年7月10日民集18巻6号1093頁)。 口頭弁論の終結に至るまで 訴えの変更ができるのは、訴状が被告に送達されてから事実審の口頭弁論終結前までである。 一審で全部勝訴した原告も、控訴審において附帯控訴により請求の拡張をすることができる(最高裁昭和32年12月13日民集11巻13号2143頁)。 法律審たる上告審では、口頭弁論が開かれても訴えの変更ができないのが原則である。例外として、給付訴訟の上告審係属中に被告が破産宣告を受け破産管財人が訴訟手続を受継した場合には、原告は、上告審において、給付の訴えを破産債権確定の訴えに変更することができるとした最高裁判所昭和61年4月11日民集40巻3号558頁がある。 なお、訴状が被告に送達される前までは訴訟係属が生じていないので、訴状の補充・訂正で対処する。訴訟係属が生じていないので、厳密には訴えの変更の問題ではない。 著しく訴訟手続を遅滞させるとまではいえないこと この要件は、訴訟経済の観点(公益的な観点)から要求される。 被告の同意(訴えの交換的変更の場合) 訴えの交換的変更を認める見解によれば、交換的変更に対して、追加的変更の要件に加えて独自の要件が必要である。 その要件とは、被告の同意である。すなわち、訴えの取下げの場合の要件を定めた261条2項の類推適用により、相手方が本案につき準備書面を提出し、弁論準備手続で申述しまたは口頭弁論をしている場合には、その同意が必要である。 なお、判例のように訴えの交換的変更という概念を認めない場合にも、類推適用ではなく単なる適用の結果同じ要件が必要である。 また、被告の同意がない場合は、追加的変更として取り扱われる。 請求の併合の要件を満たすこと 訴えの追加的変更の場合には、後発的に請求が併合されることになる。そこで136条等に定められた一般的な請求の併合の要件を満たすことが必要である。訴えの交換的変更であっても一般的な併合要件は必要とするのが通説である。 一般的な併合の要件とは、具体的には以下のようなものである。民事訴訟法136条にいう同種の訴訟手続で審理できる請求であること 専属管轄により併合請求が不可能な場合でないこと(13条、7条) 行政事件訴訟法等の個別の法令による併合の禁止にかからないこと
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