親族や姻族間の冗談関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/01 06:02 UTC 版)
冗談関係は世界中で広く見られる関係である。例えば、マダガスカルにも「ジヴァ」(ziva)と呼ばれる冗談関係の慣習がある。 ウガンダのレンドュ語(英語版)を話す人々は、核家族ごとに異なる住居に住み、子世代の住居に娘の父親(娘の夫から見ると義父)はめったなことがなければ訪問することがないが、母親(娘の夫から見ると義母)はしばしば訪問してもよいとされている。義母が子世代の住居を訪れた際、義母と娘の夫との間でみられる人間関係が「冗談関係」の一例である。義母に対して息子は無礼な振る舞いをするが、これはそのような振る舞いが社会的に許容されているのではなく、そのような振る舞いをするべきと考えられている。 冗談関係と対になる概念が忌避関係である。相手との接触や同席が禁じられ、表敬行動をとることが義務付けられるなど、社会的距離を保つ二者関係を忌避関係という。ラドクリフ=ブラウンは、冗談関係に「社会的接合」の、忌避関係に「社会的分離」の機能があり、これらが親族や姻族間の二律背反的な葛藤を避ける方法であると考えた。 「冗談関係」と対照的であるのが「交流回避的スピーチ」(Avoidance speech)である。オーストラリアの先住民社会では、2つの人間集団の間で、(母語ならぬ)「義母言語」(mother-in-law language)の使用や「沈黙交流」が行われる場合がある。こうした交流回避的スピーチは、2つの人間集団の交流を最小限にとどめることを目的としていると考えられている。ドナルド・トムソンが1935年に発表した論文によると、緊張関係にある他者と儀礼的冗談を交わすコミュニケーションと、言葉を交わすことを最小限に留めるコミュニケーションの両方を行う社会は珍しくないという。 ケニアのグシイ族の間では、祖父と孫娘、祖母と孫息子がふざけて「私の夫」「私の妻」と呼び合ったり性的な冗談の言葉で呼びかけたりする。また、お互いの家に気ままに出入りし、ベッドで同衾してもよい。祖父母は孫の侮辱的な冗談を好意や愛情の表現として受け取る。このように、親子間(隣接世代)では厳しいタブーになる事項が祖父母-孫間(隔世代)では奨励される傾向がある社会は多い。
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