西遊記の影響
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『西遊記』と同じ16世紀に成立した『水滸伝』第59回には、芒碭山の山賊として「混世魔王樊瑞」「八臂哪吒項充」「飛天大聖李袞」という3人が登場し、明らかに『西遊記』登場人物の影響を受けたあだ名となっている。『水滸伝』の成立は16世紀前半と推測されるため(詳細は水滸伝の成立史を参照)、これらの人物のあだ名は『西遊記』成立以前の旧本西遊記から取られたものと思われる。また『水滸伝』のスピンオフ的作品である『金瓶梅』でも、第73回に猪八戒が醜い顔の代表として言及されている(第76回には「朱八戒」の語が現れる)。 また神怪小説『封神演義』では李天王・哪吒・金吒・木吒・二郎神など、『西遊記』に登場した神々が大活躍する。『封神演義』の成立は世徳堂本からやや遅れた天啓年間(1620年代)頃と見られ、『西遊記』の影響を直接受けた作品である。仏教説話の衣をまとった『西遊記』では表向き仏教の神々が高い位置にいたが、道教主体の『封神演義』では、仏教の発祥よりも古い殷周革命期を扱うこともあり、完全に立場が逆転。燃灯仏が燃灯道人、観音菩薩が慈航道人、普賢菩薩が普賢真人、文殊菩薩が文殊広法天尊など、道教的な神名をつけられて登場する。 このほかにも明代には『西遊記』の影響を受けた神怪小説が多く作られている。主なものを挙げると、第61回火焔山解決後の続篇として明末の董若雨が書いた『西遊補』(1640年)全16回は、孫悟空が別世界を旅して古今の英雄達と出会う物語。また清初の『後西遊記』全40回は、三蔵取経から200年後を舞台に唐半偈・孫履真・猪一戒・沙弥らの旅を描いたもの。このほかにも多くの続篇が書かれている。一方『西遊記』は、清代には演劇の題材としても人気となっている。
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