裏側のデザイン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/24 16:15 UTC 版)
「リンカーン・セント」の記事における「裏側のデザイン」の解説
硬貨裏面の意匠に向け、3つのモデルスケッチが候補として挙がり、結果として2つの小麦の先が描かれたかなりシンプルなデザインが承認された。これら2つの小麦の間に位置する硬貨裏面の中心部には、通貨単位である「ONE CENT」の文字とその下に「UNITED STATES OF AMERICA」の文字が刻まれることとなった。その一方で硬貨の上部縁側付近にはアメリカ合衆国のモットーである「E Pluribus Unum」の文字が描かれている。これは「多数から1つへ」などの意味を表すラテン語である。 原案では「UNITED STATES OF AMERICA」の文字の下の縁に、ブレナーの正式名が彫られるはずであった。しかし、硬貨が発行される直前になって、アメリカ合衆国造幣局の職員によりあまりにも目立ちすぎると考えられたため、彼のイニシャルである「VDB」の文字に置き換えられた。硬貨が発行された後になっても、多くの人々がイニシャルでさえ目立ち過ぎでデザインの美しさを損ねるものであるとの主張が相次いだ。また、「VD」の文字が当時タブーとされていた「Venereal Disease(性病)」の頭文字を彷彿とさせるなどという主張もあった。硬貨の需要が大きく、デザインなどの変更が行われるとなると鋳造を中止する必要に迫られることから、頭文字の刻印を硬貨から取り去る決定が下された。 こうして1909年にはアメリカ合衆国で6つの異なった1セント硬貨が流通することとなった。硬貨は全部で1909年と1909年-S版のインディアン・ヘッド・セント、1909年と1909年-S版の「VDB」が印字されたリンカーン・セント、そして1909年と1909年-S版の「VDB」が印字されていないリンカーン・セントである。この「S」はサンフランシスコの造幣局で鋳造されたことを表している。これら何れの種類の硬貨においても、フィラデルフィア造幣局での貨幣鋳造量がサンフランシスコでの発行量をはるかに上回っている。この年は、1909年-S版の「VDB」が印字されたリンカーン・セントが、「VDB」印字硬貨全体のわずか1.7パーセントにあたる484000枚しか鋳造されていないため、コイン収集家の間ではかなり価値のあるものとなっている。 1959年2月12日、リンカーン生誕150周年記念の一環として、改定された裏面のデザインが披露された。この際、格式ばった意匠のコンテストなどは行われていない。当時フィラデルフィア造幣局で貨幣彫刻補佐役を務めていたフランク・ガスパッロは、造幣局職員が提案した23のモデルのうち新しいデザインとなるものを選んでいた。小麦を描いたデザインが当初定められていた25年よりも多く使用されていたため、このデザインの変更に関しても再びアメリカ合衆国財務長官の承認が必要とされた。 この新しいデザインでは、壮大な大理石のリンカーン記念館が中央に描かれ、上部の縁周辺に「E Pluribus Unum」と「UNITED STATES OF AMERICA」が、下部に「ONE CENT」の文字が描かれた。学者のスティーブ・クルックスは、自身の論文「Theory and Practise of Numismatic Design(貨幣デザインの理論と慣例)」において、硬貨裏面のリンカーン記念館は非常に細密に至るまで描かれており、その内部にはリンカーンの像も表れているため、リンカーンはアメリカの硬貨史上において、表面と裏面の両面に描かれた最初の大統領であると記している。この後1999年、ニュージャージー州の25セント硬貨裏面に、デラウェア川を渡るジョージ・ワシントンが描かれたため、ワシントンが硬貨両面にデザインされた2番目の大統領となった。 その後成立した2005年大統領1ドルコイン法によって、1セント硬貨の裏面のデザインを2009年に再び変更することとなった。これにより、4つの異なった硬貨が発行された。リンカーンの生誕200周年を記念して彼の生涯における4つの異なった情景がそれぞれに描かれている。 生まれ故郷であり、幼少時代を過ごしたケンタッキー州 発達期を過ごしたインディアナ州 職に従事し生活したイリノイ州 大統領職を務めたワシントンD.C. 2010年より現在まで「リンカーン・ユニオン・シールド」のデザインとなっている。
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