若齢幼虫の場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/09/29 21:56 UTC 版)
若齢幼虫は強い集合性があり、特に1齢幼虫では全個体が頭を集団の外側に向けた特有の集団を作る。これは足場の構造などに左右されるものではなく、紙の上に置いても同じような形を取る。この集合の過程を見ると、バラバラにされた幼虫はそれぞれ動き回っているが、たまたま2頭が触れ合うと動きを止め、そこに2頭だけの集団が出来る。するとそれに触れた他個体も次々に動きを止め、集団は次第に大きくなる。その際、触れ合った個体は触角を動かし、相手を確かめるような動作をする。その後にその個体は向きを変え、今度はお尻の方から集団に接触してゆく。このようにして、全個体が群れの外側を向いた集団が形成される。これは個体間の接触による反応と考えられ、それを感知しているのは触角で、幼虫の触角を切り取ると、集合は形成されなくなる。これは先端の説だけを切り取っても同様の効果があるが、片方の触角を残した場合、集団形成は普通に行われたため、明らかに傷による反応ではない。また、多分フェロモンも関係していると思われる。 この幼虫を集団と単独と出飼育した場合、次のような結果が出ている。1齢幼虫は摂食を行わず、卵の栄養のみで成長する。この段階での成長や生存率は集団飼育でも単独飼育でも違いが見られない。しかし摂食を始める2齢から3齢まででは、単独飼育の方が発育が遅れ、またその成育が不均一になる傾向がある。しかし4-5齢では逆に単独飼育の方が成長が早まる。実際の植物の上での観察では、1齢はほとんど動かず、2齢からは動きながら集団を作ったり散らばったりを繰り返したあげく、特定の株に集まって大きな集団を作る。その状態で3-4齢を過ごした後、最終幼虫である5齢では再び移動が始まり、それまで使っていなかった株にも広がるようになる。つまり、集団を形成することで株が悪化し、以降はそれを避けるために集団の形を変えると云った形で、一方では高い密度での利点を得て、その悪影響が出てくると高密度を避けるように動いているらしい。なお、1齢幼虫は移動せずに集団を作るので、同一の卵塊に由来する血縁集団となっている。その限りでは食われた個体が自分を犠牲にして警報フェロモンを発することで他個体の逃亡を助けるのは血縁選択に適い、利他的でないと見なせる。 また、このような幼虫の集団は、天敵が出現すると一気に解消される。例えば本種1齢幼虫の集団にその捕食者であるナミテントウを向けると、テントウが1頭の幼虫に触れた途端、それ以外の個体全てが歩き出したり、あるいはそのまま落下したりといった形でその場から逃れる。この時、全個体が外側を向いている集団はまるで花火が広がるようにして解消する。それらの幼虫は、約1時間後に同じ葉に戻って集団を形成した。テントウムシは獲物を捕らえると、その近隣を集中的に探索する地域集中型探索行動を取るが、この幼虫の動きはそれを逃れる形となっている。集団が離散する刺激は幼虫が発する悪臭であり、これが警報フェロモンとして機能していると考えられる。
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