芸術の技法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/22 07:02 UTC 版)
芸術の分野で言う「見立て」とは、対象を他のものになぞらえて表現することである。別の言い方をすると、何かを表現したい時に、それをそのまま描くのではなく、他の何かを示すことによって表現することである。日本の様々な芸術で、この「見立て」の技法が用いられている。例えば和歌、俳諧、戯作文学、歌舞伎などで用いられている。喩えているとは示さずに喩えていることが多く、その場合、欧米の学術用語で言うメタファーに相当する。 庭園 日本庭園ではしばしば(あるいはほとんどの場合)なんらかの「見立て」の技法が用いられている。たとえば枯山水では、白砂や小石(の文様)が「水の流れ」に見立てられる。その「水の流れ」が無常を表しているともされる。日本庭園では庭を宇宙に見立てている、とも言う。箱庭、盆景、盆栽などが代表例。 絵画 「見立絵」も参照 文学 前述のように日本で和歌、俳諧、戯作文学、歌舞伎などで見立てが用いられており、日本文学の価値を高めている。 文人の遊びとしても、ひとつの流れを作っており、一種の言葉遊びとなっている場合もある。「比喩遊び」とも言う。 落語 落語では、扇子や手拭いだけを用いて様々な情景を表すが、これも一種の見立てである。たとえば扇子を閉じた状態で、ある時はこれを煙管に見立て、煙管として使ってみせ、又あるときはこれを箸に見立て、蕎麦をすすってみせる、という具合である。 日本のミステリー ミステリー分野では見立て殺人と呼ばれる類別が存在する。例えば横溝正史の金田一耕助シリーズには見立てによる殺人現場がしばしば顔を出す。代表作の1つ『獄門島』では三人の被害者がそれぞれ三つの俳句の見立ての形で殺される。殺した少女の足を帯で縛り、庭の桜から逆さ吊りにしたのは「鶯の 身を逆さまに 初音かな」(宝井其角)の見立てであった。
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