自由間接話法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/17 14:34 UTC 版)
間接話法の場合、引用文を「言う」「尋ねる」等の動詞を用いて全体を締めくくり、「彼は……言った」「私は……尋ねた」のような枠をなす節の中に引用文が入る。このように引用文を締めくくる節のことを「英: reporting clause(伝達節)」という。ところが、稀に伝達節を欠く間接話法が存在する。これを自由間接話法(英語版)(英: free indirect speech)という。英語圏ではオットー・イェスペルセンの用語で描出話法(英: represented speech)ともいう。 He would return there to see her again the following day. He would come back there to see her again tomorrow. 2例とも自由間接話法の例であるが、間接化の度合にはさまざまな段階がある。2つめの例では代名詞と時制のみが間接化されており、「tomorrow」は元発話の形式を残している。 日本語では時制の一致がなく、代名詞も現れないことが少なくないので、小説の地の文の中に現れる自由間接話法と、後述する自由直接話法との区別がしにくい。そのため欧文の自由間接話法(描出話法)を日本語訳する際は(自由)直接話法に近い形に訳すことが行われている。また自由間接話法は作者の言葉(草子地)との区別や、普通の地の文との区別がしにくい場合もある。例えば上の例では「彼」が「戻ってくるつもりだ」という意志を述べているのか、それとも作者が「戻ってくるだろう」という推量を仮定法として叙述しているのかがわかりにくく、文脈で判断することになる。 以上のように日本語では通常時制の一致は起こらないが、次のような過去形の表現のことを「描出話法」と分析する者もある。 暁子は客の応対に追われ、早瀬のことも、花田のことも考えている暇はなかった。忙しいことが救いであった。幸い、仕事は光明が見えてきている。いま自分はこの仕事に打ち込むしかなかった。 ここで現在を表す「いま」という時間副詞が過去形「打ち込むしかなかった」と呼応しており、文法上は通常許されない呼応が描出話法には現れている。
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