臨床的活用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/21 07:40 UTC 版)
耳音響放射は聴覚障害を持つ新生児や、幼すぎて従来型の聴覚テストに協力できない子供に対する、簡単で侵襲的でないテストの基礎であり、臨床的に重要となっている。現在、多くの西側諸国が新生児に対する統一聴覚スクリーニングのための国家的なプログラムを有している。また、初期幼少期の児童に対する周期的聴覚スクリーニング プログラムにおいても耳音響放射テクノロジーが用いられている。全米聴覚評価・管理センター(英語: National Center for Hearing Assessment and Management)(NCHAM)によりユタ州立大学で行われた「初期幼少期児童に対する聴覚福祉計画」では、全米で幾百も行われた「初期幼児期教育セッティングにおける耳音響放射スクリーニング及びフォローアッププラクティス」が「初期ヘッドスタート計画」の助けとなったという優れた実例を示した。この主なスクリーニングツールとして、クリック誘発による耳音響障害の存在のテストが行われた。耳音響放射は蝸牛に対する鑑別診断及び高次難聴(e.g.,聴覚神経障害)の診断にも役に立っている。 耳音響放射と耳鳴りの関係は解明されている。いくつかの研究では通常の聴覚を持つ人のおよそ6%から12%が耳鳴りと自発耳音響放射の両方を持っており、自発耳音響放射が部分的に耳鳴りの原因となっていることを示唆している。研究では、いくつかの耳鳴りにおいては振動、又はリンギング誘発耳音響放射が現れており、これらのケースでは音響放射が耳鳴りの元となっているのではなく、振動誘発耳音響放射及び耳鳴りが共通の基礎病理と関係があるのではないかという仮説が立てられている。 聴力テストと合わせることで、耳音響放射テスティングによりレスポンスの変化を判断することができる。いくつかの研究では、ノイズへの暴露が耳音響放射レスポンスの低下の原因となることが判った。ある研究では、84.5dBAのノイズに暴露されている工場労働者と53.2dBAのノイズに暴露されている工場労働者を、5日間の労働の前後でのヒアリング閾値と耳音響放射に注意して比較してみたところ、高いレベルのノイズに暴露された工場労働者に対して低いレベルのノイズに暴露された工場労働者のヒアリング閾値と耳音響放射は顕著に低かった。 歪成分耳音響放射は、誘発耳音響放射に比して高周波での軽度難聴の発見に必要なほとんどの情報が得られることがわかっている。これは歪成分耳音響放射を騒音性難聴の初期の兆候の発見に役立てることが可能であることを示している。ある研究では、軍隊の成員に対する聴力測定閾値及び歪成分耳音響放射の計測では、ノイズ暴露の後では歪成分耳音響放射の低下が見られた。しかし聴力測定閾値のシフトは見られなかった。この実験結果は耳音響放射を聴覚ダメージの初期の兆候の予測に用いることを補強している。
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