肖像画の公式性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/17 22:01 UTC 版)
「クラリッサ・ストロッツィの肖像」の記事における「肖像画の公式性」の解説
構図のいくつかの特徴は、この肖像画が16世紀半ばにイタリアで形成された「公式の肖像画」の規範に対応していることを示している。少女は成熟した女性の肖像画の規範にのっとった立像として描かれている。室内の豊かな装飾は少女が上流階級に属することを強調しており、後ろには彼女の公的役割に何らかの意味を与えるであろう風景を見下ろすことができる窓がある。2歳の少女が公式の肖像画を申請することを可能とするような独立した業績がないことは明らかであるため、この肖像画を見た同時代の芸術家や鑑賞者は認知的不協和を経験したはずである。イタリア美術の研究者であるルバ・フリードマン(Luba Freedman)は、ティツィアーノが寓意のアイデアを公式の肖像画の規範に導入し、それを多くの作品で巧みに使用したことを示唆した。この説によれば、クラリッサの白いドレスと調和したつがいの白鳥は幼い子供の無垢と純粋さを象徴し、その周りの野生の森は大人の危険な世界を象徴している。 室内での古代美術に基づいた大理石のレリーフの使用は公式の肖像画の規範における追加要素である。このレリーフは風景と同様に肖像画に描かれている人物が保持しているステータスに対応する必要がある。クラリッサの肖像画の場合、レリーフは少女のイメージに完全に適した遊ぶケルビム(または翼のあるプットー)を描いている。ティツィアーノがレリーフを描いた他の2つの肖像画『ラ・スキアヴォーナ』(La Schiavona)と『ドン・ディエゴ・ウルタード・デ・メンドーサの肖像』(Portrait of Don Diego Hurtado de Mendoza)のように、画面に描かれているのは有名な場面のコピーではなく、古典をテーマにした画家の即興である。さらに、右側のプットーにはクラリッサの横顔の特徴が表されていると推測されている。これはティツィアーノが初期の作品『ラ・スキアヴォーナ』ですでに使用した技法である。このように、芸術家はクラリッサが受ける古典的な教育だけでなく、彼女自身が古代文化の継承者であり、ルネサンスで尊敬されているという事実も指摘していると推測できる。
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