翻訳と受容
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/07 07:10 UTC 版)
19世紀に翻訳されたものとしては、1870年代になされたブライアン・オルーニーの『クアルンゲの牛争い(Tain Bo Cualnge)』がある。これは、ダブリンのトリニティ・カレッジ図書館に所蔵された『レンスターの書』に基づいている。ジョン・オデイリーの1857年の翻訳もあるが、拙いものとみなされている。20世紀初頭になってはじめて翻訳が出版された。最初の英訳は1904年、ウィニフレッド・L・ファラデーによってなされた。これは『赤牛の書』と『レカンの黄書』に基づくものである。ほぼ同時期に、『レンスターの書』に基づくドイツ語訳がエルンスト・ウィンディシュによって出版された。 概略と導入部のみからなるスタンディッシュ・ヘイズ・オグレディの『クーフリン・サガ』(1898)をはじめ、部分的な翻訳は19世紀末にはなされていた。グレゴリー夫人の『ムルセヴネのクーフリン』(1903)にも、この話のパラフレーズが含まれている。このように、19世紀末から20世紀初頭には、しばしば英雄クー・フリンにフォーカスした、この物語をベースとする作品がいくつか出版された。E・ハル『アルスターの猛犬クーフリン』(1911)、H・G・テンペスト『クーフリンの砦ドゥン・ジャルガン』(1910)、A・M・スケリー『ムルセヴネのクーフリン』(1908)、S・オグレイディ『クーフリン来たれり』(1894)、などなどである。加えて同時代には、W・B・イェイツ、オーブリー・トマス・デヴァー、アリス・ミリガン、ジョージ・シガソン、サミュエル・ファーガソン、チャールズ・レナード・ムーア、フィオナ・マクラウドらによって、多くの散文作品がこの物語をインスピレーションとして作られた。スコットランドのバラッドにも使われた。 1914年、ジョーゼフ・ダンが『レンスターの書』をベースに英訳『古代アイルランド叙事詩:クーリーの牛争い』を上梓した。セシル・オライリーは、学術向けの翻訳版として『レンスターの書版クーリーの牛争い』(1967)、『クーリーの牛争い 第一稿本』(1976)を出版したほか、より後世の版であるストウ文書を元にした『クーリーの牛争い ストウ版』(1961)も出している。 2018年現在、アイルランドの詩人による2つの翻訳、トマス・キンセラの『牛争い』(1969)とキアラン・カーソンの『牛争い』(2007)が一般に入手できる。どちらも第一稿本に準じ、一部を第二稿本から加える体裁をとっているが、その選択とアレンジによってわずかに異なる。キンセラの翻訳にははルイ・ル・ブロッキの挿絵が入っており、また、前置き話のいくつかが選ばれて収録されている。 日本語訳もいくつかあるが、すべて英語からの重訳であり、古アイルランド語から直接翻訳したものはまだ存在しない。 キアラン・カーソン、栩木伸明訳『トーイン クアルンゲの牛捕り』東京創元社、2011年。ISBN 4488016510. 上記のCiaran Carson訳からの重訳。 コルマーン・オラハリー『トーィン クアルンゲの牛捕りとクーフリンの物語』アイルランドフューシャ奈良書店、2014年。ISBN 4990679601. Colmán Ó Raghallaighによる漫画化の日本語訳。
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