翻訳と翻字
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/22 23:40 UTC 版)
「エンドニムとエクソニム」の記事における「翻訳と翻字」の解説
外来地名を自言語に取り込むには大きく分けて翻訳と翻字という2つの方法があるが、原則として、内生地名・外来地名は翻訳されない。これは、翻訳された途端に地名の固有名詞としての意味が失われて、普通名詞化することを許してしまうからである。たとえば、日本の地名「大川」を Rio Grande と翻訳すれば、スペイン語圏の人々にとっては、これが日本の地名であることを理解できなくなるし、英語で Grand River と翻訳して説明すれば、英語圏の人々は普通、これを何らかの「大いなる川」のことだと捉えることになる。 上記の問題は「大川」を Ōkawa とローマ字に翻字することによって解決する。上掲の定義で例示されたロシアの内生地名 Moskva は、単にロシア語のキリル文字表記 Москва をラテン文字に翻字しただけの地名表記であり、外来地名とはいえない。同じく「北京」の拼音形 Beijing も、漢字からラテン文字への翻字による中国の内生地名であるといえる。ただし、日本語の仮名読み「ペキン」や西洋語の古いラテン文字表記 Peking は、現代中国語とは別の発音になるため、中国語の使用者にとっては外来地名と考えられている。[要出典] ドイツの内名 Deutschland に対し、英語圏の内生地名でドイツを表す Germany や、フランス語圏の内生地名でドイツを表す Allemagne などがあるが、これらを語義に基づいて翻訳すれば、それぞれ「ゲルマン人の土地」「アレマンネ人の土地」となり、ドイツ人にとっては、正確には外来地名ですらない別の意味の外来語に変化してしまう。このような内生地名は国名などに現れやすい。 例外的に大海洋のような優先地名では翻訳地名が多用される。16世紀のスペインの航海者フェルディナンド・マゼランによって提唱されたといわれる Mare Pacificum は英語で Pacific Ocean 、フランス語で l'Océan pacifique 、中国語と日本語で「太平洋」と翻訳されるが、いずれの訳も内生地名ではなく、外来地名とも捉えられない。ここで、中国語と日本語の「太平洋」は同じ文字表現で、相互理解が可能であり、発音が異なるだけなので、翻訳とはいいがたい。 ただし、2020年現在、翻訳可能な内生地名に関する考え方は国連の地名標準化会議でも未だ定着していない。
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