絶対塩分と実用塩分尺度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/24 09:09 UTC 版)
海洋学では、塩分濃度は、絶対塩分と呼ばれる、質量に対する千分率(単位;‰またはppt)が伝統的に用いられてきた。これによって、水(H2O)>は淡水・鹹水(汽水・海水)・塩水に区分される。なお、「塩分濃度」のように濃度を付けるのは誤りで、単に塩分という単語を使うべきだという意見もある。 嘗ては、塩分濃度は硝酸銀滴定や蒸発残渣の量で求められることが多かったが、これはいずれも手間が掛かるうえに正確な測定も困難だった。1960年代以降は、液体用の電気伝導率の測定が発達したため、それは試料と標準海水(英: primary standard water)の電気伝導率を検塩計で比較して求めることが多くなった。当初は、「海洋調査常用表」の編纂者であるマルティン・クヌーセンらによって1900年に国際海洋探求会議がオスロやコペンハーゲンに造られた中央実験所で原標準海水「コペンハーゲン水」(英: "Copenhagen water")と比較されて塩素量が検定されたものが、ガラスアンプル(直径約45mm・容量約230ml)に封入されて、1902年から各国に標準海水として頒布された。なお、この原標準海水の塩分濃度は従来どおり硝酸銀滴定で求められていた。(1975年以降においては、標準海水はイギリスの海洋研究所から頒布されている。)この標準海水なくしては、海水の温度や塩分から密度や水平的流速分布に至るまでの正確な測定が不可能になることを意味する。 因みに、日本は、戦前に輸入途絶という事態に絡んで、独自に「日本標準海水」の作成を試みた歴史が有る。 その後の1978年に、海洋学者は、標準海水の替わりに、塩化カリウム(KCl) の標準液を作成して試料とそれとの電気伝導率の比率で塩分濃度を表す実用塩分尺度(PSS)(英: Practical Salinity Scale)を提案した。この単位は無次元であり、通常は千分率で表記される。時にPSU(実用塩分単位)(英: Practical Salinity Unit)として表記される場合もある。 絶対塩分による区分分類淡水(英: fresh water)鹹水(英: salty water)塩水(英: briny water)汽水(英: brackish water)海水(英: marine water)塩濃度< 0.05 % 0.05 % - 3.5 % 3.5 % - 5% > 5 % なお、他分野においては、例えば、物理化学では溶媒に対する千分率が用いられ、分析化学では溶液に対する比重量で塩分濃度が表されていた。
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