粘土版 12
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 07:09 UTC 版)
粘土版 1~11 とは独立した内容で、シュメル語の神話『ギルガメシュとエンキドゥと冥界』の後半部分(プックとメックーを落とした後)の逐語訳に近い。 シュメール語版の現在よく知られる題名は『ギルガメシュとエンキドゥと冥界』、古代の書名を『古の日々に』として古バビロニア時代(紀元前2000年頃)では学校の教材にもなっていた。全文およそ300行を越える興味深い長編だが、神話風のものとなっていて解釈が難しく、前版との続き具合が不自然であるために叙事詩からは完全に切り離されて収録された。ある意味では、本編とは別の過程を辿ったギルガメシュとエンキドゥの別れの物語である。 『ギルガメシュとエンキドゥと冥界』の内容は以下の通りである。天地が創造されてしばらく経ったある時、ユーフラテス川のほとりにハラブ(フルップ)の木が生えていた。木が南風により倒れると、川の氾濫が起きてハラブの木が流されていく。これを見つけたイナンナ(イシュタル)は、椅子と寝台にする目的のため聖なる園に植えた。ところがその木に蛇やアンズー、リリトが棲みついてしまう。イナンナは兄ウトゥ(シャマシュ)に助けを求めるが取り合ってもらえず、ギルガメシュを頼ったところ彼はすぐさま斧を持って蛇たちを追いやった。木は切り倒され、イナンナは礼として木の根元からプック(輪)とメックー(棒)を作り、ギルガメシュはこれを受け取る。ところが、詳細は不明だがそれらが大地の割れ目から地下(=冥界)に落ちてしまった。エンキドゥが立候補して拾いに向かうこととなり、ギルガメシュは冥界におけるあらゆる注意事項を言い聞かせるが上手く伝わっておらず、エンキドゥはタブーを破って冥界から帰れなくなる。ギルガメシュはエンリルに訴えたが埒が明かず、エンキ(エア)に助けを求めると彼はウトゥを呼び、最後は冥界にいるエンキドゥが、エンキとウトゥの助けによって地上に戻ることができた。その後はエンキドゥにより冥界の様子が語られるが、プックとメックーについての記述はない。 文学性は「死後の世界」と「生死観への答え」であり、第8版に見るエンキドゥの埋葬儀礼にその背景が示されている。当時シュメール人は、人は死んだら冥界に行くものと考えていた。死者が冥界で歓迎されることとそこでの暮らしが難儀にならないよう、葬儀は手厚く執り行い、埋葬後も死者へ供物を捧げる習慣があった。そういった故人を懇ろに扱うことの必要性を説いているとされる
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