第7巻: ブリーフ・ライヴズ
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「サンドマン (ヴァーティゴ)」の記事における「第7巻: ブリーフ・ライヴズ」の解説
単行本の題辞は17世紀の書物『名士小伝 (Brief Lives)』からの引用である。シリーズのターニングポイントとなる長編で、物語はここから結末に向けて加速し始め、序盤のエピソードをつなげる大きな構図が明らかになっていく。 この巻のペンシラーに起用されたジル・トンプソン(英語版)は『ワンダーウーマン』を描いていた若手アーティストで、現実的で生き生きとしたキャラクター造形は高く評価されている。ディリリウムの独特な仕草や表情はトンプソン自身が投影されたものである。幼児のようにとりとめのないおしゃべりを続けるディリリウムと、謹厳で無表情なドリームの旅はロード・コメディに例えられる。 Brief Lives 錯乱した心のままに人間界を彷徨っていたディリリウムは、300年前に出奔した兄ディストラクションを懐かしむ。かつてディライト(喜び)であった彼女が現在の姿に変化したとき、兄が支えてくれたのだった。彼女は兄を探しに行こうとする。同行を求められたドリームは、人間女性との新しい恋に破れたばかりで、気晴らしとして妹とともに地上を旅しようと考える。 二人は手掛かりを求めて、失踪以前にディストラクションと交友のあった神や長命人を訪ねて回る。しかし彼らはそれぞれ不審な事故によって命を落とし、あるいは危険を感知して存在を消し、あるいは激情にかられて自滅する。自らの行動が災厄を引き起こしていると気づいたドリームは旅を中止するが、ディリリウムを落胆させたことで姉デスから叱責を受け、また死者への責任もあって探索を続ける決意をする。そのドリームに長兄デスティニーは残酷な真実を告げる。ディストラクションの居場所を告げられる唯一の託宣者は、首だけとなって祀られているオルフェウスだった。ドリームは二度と会わないと誓った息子の下に赴く。 ディストラクションは犬のバルナバスとともに二人を迎える。彼は孤島の住処で下手な詩作や絵画に日々を費やしていた。道中で出会った災厄は、追跡者を断念させるための自動システムによるものだった。かつてディストラクションは啓蒙時代の人間社会を観察して理性の世界の到来を予見し、エンドレスの責任を放棄して新しいものに道を譲った。彼はドリームに対して変わらないままでいられるものはないと告げ、ディリリウムのお守り役としてバルナバスを残して星々の世界に去っていく。 ドリームは再びオルフェウスを訪れ、その願い通り長すぎた生を終わらせる。ドリームに肉親の血を流させるというディザイアの誓いはここに果たされた。ドリーミングに戻ったドリームは、旅を始める前とはどこか異なっていた。 ドリームと息子オルフェウスの関係は前巻で説明される。冒頭でドリームの下を去る恋人は直接描かれず、それまでの経緯も語られないが、その正体は第9巻で明かされる。
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