神経系と循環系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 14:13 UTC 版)
「はしご形神経系」も参照 多くの左右相称動物と同様、節足動物は体腔を持ち、消化管は体の前後に貫通し、いわゆる口と肛門という2つ開口を持つ。体節に貫通する紐状の心臓と中枢神経はそれぞれ体の背面と腹面に付く。 循環系は開放血管系(open circulatory system)であり、細胞外液はリンパ液や血液という区別は存在せず、リンパ液と血液の役割を兼ねている血リンパ(hemolymph)が心臓と組織の間隙(血体腔)に流れる。心臓の伸縮や体の運動によって血リンパは心臓の動脈から体の静脈と呼吸器などの器官を通り、心門を通じて再び心臓に戻る。血リンパの中には免疫系に関わる血球がある。 体節制をもつ他の前口動物に似て、節足動物の神経系の様式ははしご形神経系(ladder-like nervous system)である。腹側(ただし脳は背側)の1対の神経索が体の前後を走り、各体節に由来する神経節(ganglion)は、左右の連絡(横連合、commissure)で繋がっている。 体の前端部には脳があり、食道の前上方にあることから食道上神経節(supraoesophageal ganglion、大脳神経節)とも呼ぶ。この脳は先頭3つの体節(先節・第1体節・第2体節)と共に3対の神経節が融合した結果であり、前大脳(protocerebrum)・中大脳(deutocerebrum)・後大脳(tritocerebrum)という3つの脳神経節から構成される。前大脳には複眼からの視覚情報を処理する視葉(optic lobe)、嗅覚の識別や記憶および感覚神経の統御を司るキノコ体(mushroom body)、視覚行動の統御を行う中心複合体(central body)を持つ。脳は前大脳をはじめとして背側にあるため、中央もしくは直後から食道を囲み、食道神経環(circumesophageal nerve ring)を介して腹側の腹神経索(ventral nerve cord)に連結する。昆虫・甲殻類などの大顎類の場合、食道神経環の直後は顎(大顎・小顎/下唇)に対応する神経節で、まとめて食道下神経節(suboesophageal ganglion、顎神経節)といい、ハエやハチ、チョウなどにおいては脳と融合し頭部神経節を構成する(この場合は食道上神経節のみならず、食道下神経節も脳の一部と扱う)。一部の体節の融合が進み、神経が集中してはしご形が不明瞭な場合もあり、例えばカブトガニやクモガタ類の前体において脳と腹神経索を集約させた synganglion、およびカニや派生的な昆虫において著しく集約した胸部と腹部の神経節がその例である。
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