知財調停手続
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/18 05:02 UTC 版)
2019年10月1日、東京地方裁判所および大阪地方裁判所知的財産部において、知的財産権に関する調停手続(知財調停手続)の運用が開始された。 大阪地裁において1999年から実務上行われてきた手続を、東京地裁と共通の指針に則り制度化したものであり、紛争できる限り円満に、または相手方との関係を維持しつつ、かつ秘密を保ちながら解決したいという知財ビジネス当事者の要望から生まれた制度である。 手続的には民事調停法に基づく民事調停の一種である。 知財調停手続の特徴は概ね以下のとおりである。 柔軟性 争点・課題の設定が自由にでき、当事者間の自主交渉へ戻ることや裁判手続への移行も自由である(乗り降り自由)。 迅速性 知財事件では当事者間で事前交渉が行われ、ある程度争点が特定され、資料等もある程度揃っていることが多いため、第1回調停期日までに主張・証拠提出を済ませることで、原則3回程度の期日での解決が志向されている。 申し立てには東京地裁または大阪地裁を対象とする当事者間の管轄合意が必要とされており、この点でも当事者間の事前交渉が前提とされている。 実際には3期日というのは一般の民事調停事件の平均係属期間と大差はないものの、知財事件の専門性の高さ・複雑さを考慮すれば、3期日という目安が明言されたことは、裁判所の迅速解決への姿勢を反映しているものと見ることができる。 専門性 調停委員会は知財部の裁判官および知財事件についての経験が豊富な弁護士・弁理士などから構成されるため、担当者の専門性については裁判手続と遜色がない。裁判所調査官が関与することも可能である。 非公開 非公開性は一般の民事調停と同様であるが、知財事件では紛争化している事実自体も秘匿するニーズがあり、利用促進に繋がると考えられている。 経済性 一般の民事調停申立てに要する手数料等が必要となる以外は、調停委員会の意見を聞いたり裁判所調査官の関与を求めたりしても特別な費用は発生しないため、専門的な知見を少ない負担で得ることができ、費用対効果に優れている。 実効性 調停が成立すれば任意の履行を期待しやすいというのは民事調停に一般的な特徴があるところ、知財事件の当事者は早期解決・関係性維持の希望を有していることが多いため、より一層実効性が期待できる。
※この「知財調停手続」の解説は、「調停」の解説の一部です。
「知財調停手続」を含む「調停」の記事については、「調停」の概要を参照ください。
- 知財調停手続のページへのリンク