真菌症の診断
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 14:57 UTC 版)
感染症診断上のゴールドスタンダードは原因真菌の分離同定である。しかし真菌症の特徴として、培養や生検が困難な状況が多いことが挙げられる。そのため、血清学的な補助診断を用いる場合も多い。最も有名な物はβ-D-グルカンである。β-D-グルカンは主要な病原真菌に共通する細胞壁構成多糖成分の1つである。カンジダ属やアスペルギルス属の細胞壁で豊富に含有されている。β-D-グルカンはセルロース素材の透析膜を用いた血液透析、血液製剤(アルブミン製剤、グロブリン製剤など)の使用、環境中のβ-D-グルカンによる汚染、β-D-グルカン製剤の使用、Alcalogenes faecalisによる敗血症患者、測定中の振動(ワコー法)、非特異的反応(溶血検体、高ガンマグロブリン血症)などで偽陽性になる場合がある。β-D-グルカンはカンジダ、アスペルギルス、ニューモシスチスでは上昇するがクリプトコッカス、ムコールでは上昇しない。よく用いられる真菌マーカーを以下にまとめる。また病原微生物の遺伝子検査も行われている。 抗原対応真菌細胞壁成分 β-D-グルカン カンジダ、アスペルギルス、ニューモシスチス 抗原 マンナン カンジダ 抗原 グルクロノキシロマンナン クリプトコッカス 抗原 ガラクトマンナン アスペルギルス 抗体 抗アスペルギルス沈降抗体 アスペルギルス カンジダ症 β-D-グルカンやマンナン抗原を、補助診断で用いる場合がある。ただしマンナン抗原検査は、カンジダ属菌種によっては陽性反応を示さない場合も見られる。GeniQ-カンジダなど遺伝子検査キットも存在する。 クリプトコッカス症 グルクロノキシロマンナン抗原を、補助診断で用いる場合がある。ただし、播種性トリコスポロン症でも陽性化するので、注意が必要である。 アスペルギルス症 ガラクトマンナン抗原と抗アスペルギルス沈降抗体が、補助診断で用いられる場合がある。肺アスペルギローマや慢性壊死性肺アスペルギルス症などの慢性アスペルギルス感染症では、ガラクトマンナン抗原は検出され難く、抗アスペルギルス沈降抗体を検出することで臨床診断の参考にできるとされている。ガラクトマンナン抗原特にプラテリアアスペルギルスでは、タゾバクタム/ピペラシリン投与、クラブラン酸/アモキシシリン投与、ビフィドバクテリウム属の当館内定着、C.neoformans galactoxylomannan、大豆タンパク質を含む経管栄養などで測定結果が影響を受ける。
※この「真菌症の診断」の解説は、「抗真菌薬」の解説の一部です。
「真菌症の診断」を含む「抗真菌薬」の記事については、「抗真菌薬」の概要を参照ください。
- 真菌症の診断のページへのリンク