的を得る
的を得る(まとをえる)は、事の要点を的確に捉えている・本質を突いている・理にかなった正しい見方である・まったくその通りである、といった意味で用いられることのある言い回し。誤用か否かで解釈が揺れた表現。
「的を得る」は誤用か、それとも正しい表現か、という議論の詳細
「的を得る」という表現は誤用か否かを巡る議論があり、「的を得る」は誤用とする解釈が半ば標準的な見解となっていた。この「的を得る」という言い回しには、「当を得る」・「的を射る」・「正鵠を得る」・「正鵠を射る」と、意味も用法もほぼ同じ同等の類似表現が多くある。「的を得る」は、これらの表現が混同されてできた表現であり、したがって誤用であるとされてきた。
「得る」という動詞は、主に「手に入れる」という意味合いで用いられる。しかし「的」は、射るものであって入手するようなものではない。このような解釈では字義に無理が生じるわけである。
三省堂国語辞典は、この「的を得る」という表現を長らく誤用として扱ってきたが、改版にあたり再検証を実施、その結果、「得る」の字義を「うまく捉える」の意と捉えれば「的を得る」も誤用とは当たらないと結論づけ、《「的を得る」は「的を射る」の誤り》という従来の記述を撤回している。
「得る」の字義を「うまく捉える」と捉えられる表現の例として、三省堂は「当を得る・要領を得る・時宜を得る」 を挙げている。
関連サイト:
「三省堂国語辞典」編集委員・飯間浩明のTwitter(@IIMA_Hiroaki) 2013年12月15日
的を得る
出典:『Wiktionary』 (2019/09/02 17:59 UTC 版)
成句
語誌
- 一時期「的を射る」と「当を得る」等との混同であり一種の誤用と多くの国語学者等に理解され、それが半ば定説化されてきた言葉である。三省堂国語辞典、大辞泉、大辞林及び明鏡国語辞典はその旨を明記し、文化庁発表による平成24年度「国語に関する世論調査」においても誤った言葉遣いの例として調査が実施されている。
- しかし、広辞苑、新明解国語辞典その他の辞書には明確に誤りとの記述はなく、第3版以来、約30年間「誤り」としてきた三省堂国語辞典は第7版で普通の慣用句として収録した。
- 元来、「得る」には可能や成功の意味が含まれ、「的」も要点や核心を意味する比喩として慣用されていたため、「的を得る」という言葉を「射撃用の標的を入手する」意味にしか解釈できないとする見解は合理的ではない。また、文化庁の調査でも、40年近くに渡って「的を得る誤用説」が流布したあとの2012年ですら四割以上の人が「的を得る」を用いるとしており、これも「かなり独特な表現ではあるが日本語話者ならば意味の了解は可能であり、コミュニケーションに問題は生じない」点に一因があると思われる。
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