玉置山の自然と社地の構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/03 20:05 UTC 版)
「玉置神社」の記事における「玉置山の自然と社地の構造」の解説
玉置神社の聖域である玉置山は、山頂を除く標高1000メートルから1040メートルにかけて枕状溶岩堆積地があり、海底火山の噴火により玄武岩質の溶岩が水中に噴出して急速に冷却・固化したことにより生じた、不規則な楕円状または曲がった丸太状の形状をした溶岩が一帯に露頭している。玉置山山頂の南側斜面には枕状溶岩の顕著な露頭が見られ、場所によっては枕状溶岩が重なり合っている。 玉置山の標高800メートル以上の植生はブナ林帯であるにかかわらず、山頂付近のみはスギ、ヒノキ、モミ、ツガなどの針葉樹と、ブナ、ミズナラ、アカシデといった落葉広葉樹が混在する植生を示しているが、これは溶岩性の地質によるものである。また、枕状溶岩の重なり合いのなかには、「玉木」あるいは「玉置(玉を重ねて置いた)」ように見える箇所があって宿や山の名の由来と解され、こうした地質と植生の特異がもたらす景観こそが、玉置山を霊地とし、宿を成立せしめた根元であると考えられている。 また、露頭の西端にある乳岩と呼ばれる巌には、鳥居のみを設けて白山権現を祀る白山社の磐座となっており、玉置山における磐座信仰の古い形を伝えるものである。反対側の東端の支尾根には峯中路が走り、その途中に玉石社と呼ばれる地主神の祭壇が設けられている。聖域の根本的な要素である枕状溶岩露頭を峯中路から拝礼しようとする場合、玉石社の祭壇は適所であることから、本来は拝所であったと見ることができる。 玉石社は玉置神社の奥社であるとされる(『玉置山縁起』)が、今日では玉石社の神体である枕状溶岩の周囲に人工的な作為が相当に加えられており、自然石を自然の状態で拝礼することを重んじる山岳修験の本来の思想からは異質な状態であることから、遅くとも近世後期にさかのぼる造作の可能性が指摘されている。今日の社殿は枕状溶岩露頭を背後に背負った位置にある。露頭直下は傾斜が急で地すべりを起こしやすく、堂舎を営むには無理があることから、斜度が緩やかになる現在地まで標高を下げたのであろうが、しかし、そのことは本来の礼拝対象である「玉木(玉置)」が何であるかを分かりにくくし、霊地の根元を不明確にしてしまったと考えられている。
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