犯人の『逮捕』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/06 13:41 UTC 版)
「ドイツ国会議事堂放火事件」の記事における「犯人の『逮捕』」の解説
現場を捜索したところ、焼け残った建物の陰でちぢこまっていた半裸の人物マリヌス・ファン・デア・ルッベが発見された。ルッベはオランダ人で精神に障害を負った無政府主義者であり、オランダ共産党員であった。ルッベは放火の動機は「資本主義に対する抗議」と主張しており、プロイセン内務省政治警察部長ルドルフ・ディールスも「一人の狂人の単独犯行」と推定した。 ディールスは国会議長公邸で開かれた閣僚、警視総監、ベルリン市長、イギリス大使、元皇太子ヴィルヘルム・アウグストなどが参加する対策会議で犯人逮捕を報告した。しかし、ヒトラーは「共産主義者による反乱計画の一端」と見なし、「コミュニストの幹部は一人残らず銃殺だ。共産党議員は全員今夜中に吊し首にしてやる。コミュニストの仲間は一人残らず牢にぶち込め。社会民主党員も同じだ!」と叫び、単独犯行であるとするディールスの意見を一蹴した。 ゲーリングはプロイセン州警察の公式発表に介入し、犯人が用意した放火材料「100ポンド」(約47キログラム)を「1,000ポンド」(約470キログラム)と訂正させた(1プロイセンポンドは約470グラム)。担当官が、多すぎて一人では運ぶのは不可能だ、と抗議すると「何事も不可能では無い!だいたいなぜ単独犯行と書くのだ?10人も20人もいたかもしれないじゃないか! きみには何が起ころうとしているのかわからないのか? この事件はコミュニスト蜂起の合図なんだぞ!」と叫び、「2人の共産党議員」が共犯だと書き加えた。担当官は政治的文書であることを理由にゲーリングの署名を求め、ゲーリングはしぶしぶ「G」とだけサインした。ナチス党機関紙フェルキッシャー・ベオバハター紙の一面もこの『陰謀』の記事に差し替えられ、ヒトラーとゲッベルスが編集に立ち会った。 その日のうちにプロイセン州警察は共産党議員や公務員の逮捕命令を出した。共産党系の新聞はすべて発行禁止となった。その後、共産党議員団長であるエルンスト・トルクラー(ドイツ語版)や後にコミンテルン書記長を務めるゲオルギ・ディミトロフ、ディミトロフと同じブルガリア人の共産主義者であるブラゴイ・ポポフ(ブルガリア語版)とヴァシリ・テネフ(ブルガリア語版)の4名が共犯として逮捕された。
※この「犯人の『逮捕』」の解説は、「ドイツ国会議事堂放火事件」の解説の一部です。
「犯人の『逮捕』」を含む「ドイツ国会議事堂放火事件」の記事については、「ドイツ国会議事堂放火事件」の概要を参照ください。
- 犯人の『逮捕』のページへのリンク