物理学の範囲で
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/26 22:57 UTC 版)
一般的に物体が重力に逆らって空中に浮かび上がる際に利用する力としては、空気に対する浮力や磁力同士の反発力(→引力と斥力)が知られているが、その他の物理現象としては、磁場中の超伝導体が起こすマイスナー効果がある。磁場同士の反発の場合には、リニアモーターのように幾つかの磁場を調整して物体を一定の場所に留めるようにしなければ静止的な空中浮揚にはならない。ただし、超伝導体が第二種超伝導体の場合は、磁場に対する反発力とは別に超電導物質内の不純物に由来する常伝導による支持力の発生がもたらすピン止め効果と呼ばれる「空中に固定された状態」が発生する。 玩具としては、永久磁石による「空中浮揚するコマ」(→独楽)が商品化されている。磁石の内蔵された独楽を専用の台の上にプラスチック板を置いてその上でまわし、その後に少し持ち上げると空中にとどまって回転する。しかし、そのように回すのはかなり難しい。独楽が台座からの磁力によって空中に固定される空間が限られており、それ以外の場所では逆に独楽が弾かれたり吸い付いたりしてしまうためである。 また、静電場による反発効果を利用したイオノクラフトも掛けられた電圧強度によっては浮遊することが知られている。 この他にも、作用・反作用に基づいて何か質量のある物質を噴射しているホバリングと呼ばれる状態では、物体が発する噴射力と物体に掛かる重力などの他の力が釣り合っている場合に物体が空中に静止することになるが、こちらは、一般に「空中浮揚」とイメージされる範疇には含まれない。なお、ホバリングを行うものとしては、ヘリコプター、垂直離着陸機、ホバークラフト、噴射力を極めて精密に制御しているロケットなどがある。 また、いわゆる静止衛星では、地球側に落下しようとする力と衛星軌道から宇宙に脱出しようとする力の均衡状態が利用されている。ただし、静止衛星は、速度が変化するなどして所定の衛星軌道(静止軌道)から外れると、たちまち地球に向かって落ちてくるか衛星軌道から弾き飛ばされる(→人工衛星)。この静止衛星の原理は、地上からの距離(赤道からの高度約35,786km)があることもあり、一般にいうところの「空中浮揚」のイメージからはかけ離れている。 なお、物理学の立場からは、後述のヨガや心霊主義における空中浮揚は未検証な現象、あるいは疑似科学の範疇だとみなされている。
※この「物理学の範囲で」の解説は、「空中浮揚」の解説の一部です。
「物理学の範囲で」を含む「空中浮揚」の記事については、「空中浮揚」の概要を参照ください。
- 物理学の範囲でのページへのリンク