物理学の概念としての真空
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/04 15:44 UTC 版)
古典論における絶対真空 古典論において、真空は物質が存在せず・圧力が 0 の仮想的状態、「何も無い状態」である。 絶対真空ともいう。 これは概念的なものであり、実際に実現可能なものではない。 絶対真空とは空間中に原子・分子が一つも存在しない状態を表すが、具体的な方法で実現可能な真空状態(本稿で言う一般利用の真空状態)には物質が存在し圧力が観測される。例えば地球の表面上の圧力(1気圧)= 100 kPaの条件の下では1 cm3中の気体分子は0 ℃時で2.69×1019個存在する。真空の実現とはその膨大な量の原子・分子を減らしていく過程であるが、人為的に作り出せる真空状態の限界は10−11 Pa程度である。この圧力下でも1 cm3に数千個の気体分子が存在する。宇宙空間においても空間中に物質が何も存在しないわけではなく気体原子・分子は存在し、さらに外宇宙と呼ばれる銀河と銀河の間でも気体原子・分子は存在するとされている。 量子論における真空状態 詳細は「真空状態」を参照 量子論における真空は、決して「何もない」状態ではない。例えば常に電子と陽電子の仮想粒子としての対生成や対消滅が起きている。 ポール・ディラックは、真空を負エネルギーを持つ電子がぎっしりと詰まった状態(ディラックの海)と考えていたが、後の物理学者により、この概念(空孔理論)は拡張、解釈の見直しが行われている。 現在の場の量子論では、真空とは、十分な低温状態下を仮定した場合に、その物理系の最低エネルギー状態として定義される。粒子が存在して運動していると、そのエネルギーが余計にあるわけであるから、それは最低エネルギー状態でない。よって十分な低温状態下では粒子はひとつもない状態が真空である。ただし、場の期待値はゼロでない値を持ちうる。それを真空期待値という。たとえば、ヒッグス場がゼロでない値をもっていることが、電子に質量のあることの原因となっている。
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