ピン止め効果とは? わかりやすく解説

ピン止め効果

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/02 08:46 UTC 版)

ピン止め効果によって宙に浮かぶ磁石

ピン止め効果(ピンどめこうか、: flux pinning、磁束ピン止めともいう)とは、磁束第二種超伝導体の内部にあるひずみや不純物などの常伝導部分に捕らえられ、ピンで止めたように動かなくなる現象。第二種超伝導体において、外部磁場臨界磁場Hc1とHc2の間にあるときに起こる。

概要

磁束を完全に排除する第一種超伝導体にはみられない現象である。

量子化磁束が内部に侵入している第二種超伝導体に電流を流す場合を考える。このとき、電流によるローレンツ力のため、量子化磁束が電流に対して垂直方向に力を受ける。この力を受けて量子化磁束が超伝導体内部を移動すると、誘導起電力が発生し、超伝導体であるにもかかわらず電気抵抗が発生してしまう。

バルクの超伝導体に重粒子線を照射したり、不純物を導入したりすることでわざと欠陥をつくり、この欠陥に量子化磁束をトラップすることにより、誘導起電力による電気抵抗の発生を防ぐことができる。 また、超伝導薄膜においてはリソグラフィエッチングによって(擬)三角格子状の穴(Anti-dots)を無数に開けることでロスを回避する手法がある。

常伝導体である転移温度以上の第二種超伝導体に磁場をかけておき、内部に磁場を侵入させておく。その状態で超伝導に転移させると、ひずみや不純物には磁束が侵入したままになる。あるいは、外力によって超伝導状態の第二種超伝導体を磁石に近づけて、磁石の磁束を超伝導体内部に押し込み、磁束を侵入させる。超伝導体部分ではマイスナー効果により磁場は排除され、侵入している磁束はピン止め効果によって一定位置に拘束される。このとき磁束量子同士はマクスウェルの応力により退け合い、欠陥など他の寄与がなければ三角格子状に整列する(アブリコソフ格子)。その後再び大きな外力の加えられるまでは、超伝導体に拘束された磁束によって、磁石と超伝導体の間の距離が一定範囲に保たれる。

ピン止め効果:磁束線の概略図

超伝導体の上に磁石が浮上、または磁石の上に超伝導体が浮上して静止している現象(超伝導磁気浮上)は、しばしばその原理がマイスナー効果による磁束を退ける力だけであると誤解されることがある。マイスナー効果だけでは同極同士の磁石を近づけたときのように安定はせず、ピン止め効果だけでは超伝導体と磁石が引っ付いている、という状態もありうる。正しくは磁束を退けるマイスナー効果により浮上し、ピン止め効果による支持力により静止できる。

外部リンク

Quantum Levitation --テルアビブ大学によるデモンストレーション

関連項目


ピン止め効果

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/20 15:07 UTC 版)

超伝導」の記事における「ピン止め効果」の解説

磁束格子状態において、外部磁場変化に対して磁束格子追随して変化しない現象ピン止め、あるいはピン止め効果と呼ぶ。実用超伝導体において重要な現象。この現象なければ実質的に超伝導体電流流せないため実用化ができなくなる。ひずみや不純物などの欠陥多く含む非理想的な第二種超伝導体を貫く磁束は、これらの欠陥引っかかり止められ動けない。(ピン止め効果を参照のこと。)

※この「ピン止め効果」の解説は、「超伝導」の解説の一部です。
「ピン止め効果」を含む「超伝導」の記事については、「超伝導」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「ピン止め効果」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ピン止め効果」の関連用語

ピン止め効果のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ピン止め効果のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのピン止め効果 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの超伝導 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS