無伴奏合唱のための交響曲
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/18 14:25 UTC 版)
「合唱交響曲」の記事における「無伴奏合唱のための交響曲」の解説
合唱が声楽と器楽の両方の役割を果たすような、無伴奏合唱のための交響曲を書いた作曲家も少数ながら存在する。グランヴィル・バントックはそうした作品として『Atalanta in Calydon』(1911年)、『Vanity of Vanities』(1913年)、『A Pageant of Human Life』(1913年)の3曲を遺している。音楽評論家のハーバート・アントクリフが「技術的な実験と着想の点で似ている[3作品のうち]最も重要」であると述べている『Atalanta』は、「各パート少なくとも10名以上」と指定された上で20の独立した声部に分かれており、最低でも200人を擁する合唱隊のために書かれている。この効果を武器にバントックは「重さと色彩の異なる」集団を形成させ、「ちょっとした[管弦楽の]色の配合や遠近感のある多様な演奏を実現できる」ようにした。加えて、合唱は概して3部に分割されており、木管楽器、金管楽器と弦楽器から構成される音色に近づけられている。アントクリフが書くには、こうした分割を行うことにより 可能性のあるほとんど全ての声楽的表現が単独、もしくは他との組み合わせで用いられる。合唱隊の様々なパートがそれぞれ言葉を述べていたり、「笑い声」や「泣き声」の調子を表現するのを一度に耳にすると、普通の指揮者や作曲家がいまだ合唱の持つ可能性をいかにわずかしか手中に収めていないかということに気づかされる。そうした組み合わせは適切になされた場合は殊の外効果的であるが、それを実現することは極めて困難である。 ロイ・ハリスは8部にわかれた合唱を用いて1935年に声楽のための交響曲『ア・カペラ』を作曲した。ハリスは和声、リズムと強弱に焦点を当て、ウォルト・ホイットマンのテクストを合唱作品に仕立て上げた。「実際の感覚では、ホイットマンの詩に活き活きと描写される人の努力は、歌手が受ける音楽上の試練に近いのだということが見いだされる」とし、ジョン・プロフィットは演奏者にとってのこの音楽の難しさ、及び喚情的な質の高さについて言及している。マルコム・ウィリアムソンは1960年から1962年にかけて、オーストラリアの詩人ジェームズ・マコーリーのテクストを用いて声楽のための交響曲を書いた。ルイス・ミッチェルの記すところではこの作品は純粋ないかなる感覚をもってしても交響曲とはいえず、むしろ独唱コントラルトの祈りの言葉に続く4楽章の作品であるという。テクストはオーストラリアの荒野と幻想のようなキリスト教信仰を賛美した内容が合わさってできており、そのギザギザした行とリズムに音楽が合わせている。ミッチェルは次のように書いている。「Tribe Brotherのためのレクイエムが例外となる可能性がある他は、この交響曲は彼の全合唱作品の中で感情的に最もオーストラリア的である。」
※この「無伴奏合唱のための交響曲」の解説は、「合唱交響曲」の解説の一部です。
「無伴奏合唱のための交響曲」を含む「合唱交響曲」の記事については、「合唱交響曲」の概要を参照ください。
- 無伴奏合唱のための交響曲のページへのリンク