火星観測と地図の作成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 07:15 UTC 版)
「マーズ・グローバル・サーベイヤー」の記事における「火星観測と地図の作成」の解説
最終的にサーベイヤーは平均高度378kmの117.65分の公転周期をもつほぼ真円の軌道をもつに至った。軌道は極軌道に近く(軌道傾角 93°)、よってほぼ1時間で火星の南極上空から北極上空に到達する。この周期をもつ高度は、探査機から撮影される同じ地点の画像が、異なる日であっても常に同一の光の状態となるよう太陽の向きと同期するように選択されたものであった。サーベイヤーは各軌道周回ごとにその下で自転する火星の28°.62ずつ西の地点を通過した。地球の時間で 24時間39分35秒の火星の自転周期はソル (sol) とよばれ、サーベイヤーのこの公転周期は88周でほぼ正確に7ソルとなる。すなわち火星の時間で7日ごとに探査機はほぼ同じ経路をたどった。実際には59kmだけ東へのずれがあるので、これにより最終的に(極地のごく一部を除く)火星全体を探査機がカバーできることを保証していた。赤道での59kmはほぼ経度の1°に相当する。 搭載されたカメラ MOC は、主として探査機直下の25万枚にのぼる画像を収集した。直下の画像を得るためにローリングとピッチングの装置が用いられた。これらの装置は探査機と火星表面との相対的な動きを補正し、最も高解像度のカメラでは地上0.5mの解像度の写真を撮影できた。延長ミッションでは直下以外の画像の撮影も行われた。 レーザー照射と反射波の測定による表面高度測定装置MOLAは、ほぼ全球の地形データを獲得し、これによって詳細な火星の数値標高モデル MEGDR が作成・公開された。 これは火星の過去にあったであろう水の流れなどを同定する調査にも用いられた。また極冠の厚さなどの地形の季節変化の測定にも成功した。レーザーの照射装置そのものは2001年6月に寿命をむかえたが、測定装置はその後も地表の観測を続けた。 このほか赤外線スペクトロメータ TES は惑星の気候の測定をはじめ、ヘマタイトの集積などの測定を行い、これにより太古の火星に大量の水とより厚い大気があったことを示唆する新しい証拠が見出された。 さらに磁力計 MAG/ER によって火星の弱い磁場が惑星の核がもたらすような一様なものではなく局所的に偏って分布していることを明らかにした。 探査機が交信を絶った後の2006年12月になって MSSS はクレーター内壁の浸食痕 (gully) の膨大な調査の末に、火星南半球のシレーン陸地(英語版)とケンタウリ台地(英語版)にあるクレータの内壁の写真を公表し、ごく最近に新たに堆積物の現れた浸食痕があることを示した。 サーベイヤーによってそれぞれ4年と6年の間隔を開けて撮影されたこれら2組の同じ場所の写真には、それぞれの新しいものの方に明るい筋状の堆積物があり、これはこの期間のどこかで水と思われる流体が吹き出し流れた後だと示唆された。
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