ほうてい‐いけん〔ハフテイ‐〕【法廷意見】
読み方:ほうていいけん
⇒多数意見
法廷意見
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/15 05:04 UTC 版)
法廷意見は、ウィリアム・O・ダグラス判事による。 被告人にして上訴人の川北は、生まれながらにアメリカ合衆国と日本国の二重国籍者である。二重国籍は異なる国の国籍法が競合する結果として不可避であり、長年法的に認められている地位である。二重国籍者は両国で国民としての権利と義務が生じる。もう一方の国の国民として権利を享受し義務を履行しても、法律に特別の規定がある場合を除き、アメリカ合衆国の市民権は失われない。すなわち、被告人は今日まで一度たりともアメリカ合衆国市民権を喪失していない。なぜならば、被告人は父親が日本国民であるという事実により、日本の国籍法の規定から生まれながらに日本国民であった。1943年の養子縁組で初めて戸籍に名前が記載されたとしても、それはもともと持っていた日本国籍の存在を確認したにすぎず、日本への帰化とみなされるべきではない。したがって、被告人は1940年国籍法第401条(a)(外国籍取得による市民権喪失条項)の適用を受けない。 また、被告人は、日本軍の兵士ではなく民間企業の通訳であったから、1940年国籍法第401条(c)(外国軍入隊による市民権喪失条項)の適用を受けない。 さらに、国務省は、X国の国籍を持つアメリカ合衆国市民は、X国に居住している間、X国に対する忠誠義務を我が国に対する忠誠義務より優先してもよいと判断している。したがって、日米二重国籍者である被告人が日本に忠誠を誓っても、1940年国籍法第401条(b)(外国への忠誠宣誓による市民権喪失条項)による市民権喪失は認められない。 被告人は戦時中アメリカ合衆国市民でなくなっていたと信じていたと主張するが、複数の元捕虜の証言と被告人の言動からその主張に疑いを抱く地方裁判所陪審の判断が誤りとは言いがたい。 アメリカ合衆国憲法第3条は反逆罪の成立要件として領域的限界を規定しない。重国籍者であっても、アメリカ合衆国市民はその居住地にかかわらずアメリカ合衆国に対する忠誠義務を免除されず、反逆行為を免責されることはない。重国籍者は反逆罪に問われるリスクを回避するために、自らの意思でアメリカ合衆国市民権を放棄することができる。 反逆罪として問われるべき行為は、義務や強制に因らない行為者の積極的な自発的行為でなければならない。被告人の捕虜に対する虐待は、上司の命令などでない、被告人の自発的な行為であったと認められる。反逆的な行為は限度を超え執拗であり、敵国を利する行為であったと言える。よって、被告人は合衆国に対する反逆罪について有罪である。
※この「法廷意見」の解説は、「川北対合衆国事件」の解説の一部です。
「法廷意見」を含む「川北対合衆国事件」の記事については、「川北対合衆国事件」の概要を参照ください。
法廷意見
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/07 07:40 UTC 版)
「在外日本人選挙権訴訟」の記事における「法廷意見」の解説
違法確認の訴えは却下したものの、本件判決後の次回の衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙及び参議院議員の通常選挙における選挙区選出議員の選挙において、在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票をすることができることを確認するとともに、被告に対し5,000円及び遅延損害金の賠償を命じた。 本件においては、まず自ら選挙の公正を害する行為をした者等の選挙権について一定の制限をすることを別として、国民の選挙権又はその行使を制限することは原則として許されず、国民の選挙権又はその行使を制限するためには、そのような制限をすることがやむを得ないと認められる事由がなければならないとした上で、そのような制限をすることなしには選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不能ないし著しく困難であると認められる事由でない限り、上記やむを得ないと認められる事由であるとはいえず、このような事由なしに国民の選挙権を制限することは憲法15条1項及び、3項、43条1項並びに44条ただし書きに違反するとし、国が国民の選挙権の行使を可能にするための所要の措置を執らないという不作為によって国民が選挙権を行使することができない場合も同様であるとした。 そして、1984年(昭和59年)の時点で選挙の実施に責任を持つ内閣が在外選挙権の行使に関する諸問題の解決が可能であるとの前提で、在外選挙制度の創設を内容とする公職選挙法改正案が提出され、同法案が廃案となった後、国会が10年以上の長きにわたって在外選挙制度を創設しないまま放置したことは、やむを得ない事情があったとは到底いうことができず、1996年(平成8年)当時の公職選挙法が、在外国民に原告らの投票を求めなかった公職選挙法は、憲法15条1項及び3項、43条1項並びに44条ただし書きに違反すると判断した。 さらに、本件改正後に在外選挙が繰り返し行われ、通信手段が地球規模で目覚ましい発展を遂げている事などにより、在外国民に候補者個人に関する情報を適正に伝達することが著しく困難でなくなったこと、並びに参議院比例代表選挙が非拘束名簿式に改められ、候補者名で投票することが原則とされ、実際にこの制度に基づく選挙権の行使がされていることに照らすと、遅くとも、本判決言渡し後に初めて行われる衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の時点においては、衆議院小選挙区選出議員の選挙及び参議院選挙区選出議員の選挙について在外国民に投票をすることを認めないことがやむを得ない事由があるとはいえない。よって、公職選挙法附則8項のうち、在外選挙制度の対象となる選挙を当分の間両議院の比例代表選出議員の選挙に限定する部分は、憲法15条1項及び3項、43条1項並びに44条ただし書きに違反すると判断した。 次に、確認の訴えについての適法性について判断を示し、本件改正前の公職選挙法が衆議院議員の選挙及び参議院議員の選挙における選挙における選挙権の行使を認めていない点において違法であることの確認を求める訴えは、過去の法律関係の確認を求めるものであり、この確認を求めることが現に存する法律上の紛争を直接かつ抜本的に解決のために適切かつ必要な場合であるとはいえないから、確認の利益が認められず不適法であると判断した。さらに、本件改正後の公職選挙法が衆議院小選挙区選出議員の選挙及び参議院選挙区選出議員の選挙における選挙権の行使を認めていない点において違法であることの確認を求める訴えは、他により適切な訴えによってその目的を達成することができる場合にあたり、確認の利益を欠き不適法であると判断した。 しかし、本件予備的請求については、公法上の当事者訴訟のうち公法上の法律関係を関する確認の訴えと解され、選挙権は、これを行使することができないと意味がないものといわざるを得ず、侵害を受けた後に争うことによっては権利行使の実質を回復することができず、その権利の重要性にかんがみるとき、具体的な選挙につき選挙権を行使する権利の有無につき争いがある場合でこれを有する確認を求める訴えについては、それが有効適切な手段であると認められる限り確認の利益を有し、本件では確認の利益を有すると判断した。よって、引き続き在外国民である原告らが、次回の衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員選挙及び参議院議員の通常選挙における選挙区選出議員の選挙において、在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票することができる地位にあることの確認を請求する趣旨のものとして適法な訴えということができると判断し、本件請求を認容した。 最後に、国家賠償請求については、国会議員の立法行為又は立法の不作為が、国家賠償法の適用上違法となるかどうかは、国会議員の立法過程における行動が、個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背したかどうかの問題であって、当該立法の内容又は立法不作為の違憲性の問題と区別されて解釈されるべきであるとし、立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に、国会議員の立法行為又は、立法の不作為は、国家賠償法の規定の適用上、違法の評価を受けると判断した。 そして、本件においては、上記の例外的な場合にあたり、過失の存在を否定できず、原告らに慰謝料5,000円の支払を命じた。
※この「法廷意見」の解説は、「在外日本人選挙権訴訟」の解説の一部です。
「法廷意見」を含む「在外日本人選挙権訴訟」の記事については、「在外日本人選挙権訴訟」の概要を参照ください。
- 法廷意見のページへのリンク