法廷弁護士の業務
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/09 01:49 UTC 版)
分業制の国では、依頼者と会って直接仕事をするのは事務弁護士である。そして事務弁護士が、依頼者の予算の範囲内で、事件の性質を踏まえて、適任かつ経験のある法廷弁護士に委任する責任を持つ。法廷弁護士(「カウンセル」ともいう)は依頼者と直接コンタクトをとることはほとんど、あるいは全くない。特に、委任者である事務弁護士の立会や関与なく依頼者と接触することはない。法廷弁護士からの連絡、事情の聴取り、報酬請求などはすべて事務弁護士宛てに行われ、法廷弁護士の報酬については事務弁護士が基本的に責任を持つ。 法廷弁護士は、かつて、準備書面(訴答書面)の作成や証拠の検討など、裁判の準備の上でも大きな役割を担っており、一部の法域では、現在もそれが行われている。しかし、その他の法域では、法廷弁護士は、審理の1、2日前に事務弁護士から“brief”という摘要書だけを受け取るというのが一般的である。その理由の一つが、費用の問題である。法廷弁護士は、摘要書を受け取った時点で“brief fee”と呼ばれる着手金を受け取ることができ、これが法廷弁護士の裁判関係の報酬の大部分を占める。そして、裁判の2日目から、1日ごとに “refresher”と呼ばれる追加報酬が発生する。裁判は審理の間際数日前に和解で解決することが多いことから、多くの事務弁護士はぎりぎりまで摘要書の授受を遅らせて費用を節約しようとするのである。 多くの国で、法廷弁護士は1人で開業しており、パートナーシップを結ぶことは禁止されている。もっとも、法廷弁護士は一つの事務所 (chamber) を共用し、事務員や運営費を分担し合っていることが多い。事務所の中には、大型化・高機能化し、会社のようになっているところもある。他方で、事務弁護士事務所の勤務弁護士や、銀行、会社等のインハウスローヤーとして雇われて働く法廷弁護士もいる。 後述する上級事務弁護士(ソリシター・アドヴォケイト)に弁論権が与えられた現在では、事務弁護士の法律事務所では、コスト面や、依頼者との関係の都合上から、最先端の分野の顧問業務・訴訟業務でさえ事務所内で処理するところが増えている。他方で、法廷弁護士が一般顧客から直接法律相談を受けることの禁止も、かなり撤廃されている。それでも、ほとんどの法域で、法廷弁護士が直接法律相談を受けることは少ないのが実情である。これは、狭い専門分野に特化した法廷弁護士や、弁論中心のトレーニングを受けている法廷弁護士は、相談者への一般的なアドバイスの提供に対応できないというのも一つの理由である。
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