機械化軍
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 05:47 UTC 版)
赤軍は戦争の階層構造に「作戦」という中間領域をおき、戦略と戦術をつなげる術策として作戦術を生みだした。また決勝会戦が生起しないという現代戦の前提にたった上で敵を殲滅するには、個々の会戦ごとに作戦を立案するのではなく、複数の会戦をまとめて「戦役」としてのグランドデザインを作り戦略目標につなげる必要があると考え、連続作戦理論を導入した。連続して作戦を実施するには機動力とそれを保証する火力が必要となる。そこで赤軍が注目したのが機械化兵団だった。赤軍野外教令では機械化兵団の特性を高度な機動力と絶大な火力、打撃力にあると述べている。殲滅戦を目指す赤軍の戦闘原則は作戦次元の機動戦で敵軍を無力化し、作戦を繰り返した結果として戦略次元で敵を破壊することにある。機動戦の主役である機械化兵団は赤軍の戦闘教義の根幹を担う兵科であり、ソ連は機械化の推進に全力を注いだ。ソ連の主力となる戦車T-34は、連続作戦に耐えうる火力と機動力を兼ね備えた戦車として用兵思想上開発された戦車である。 遠距離行動戦車群 全縦深の突破を担う快速の機動部隊であり、基幹は旅団。主に戦術単位での最遠方で敵と戦い、戦術次元で運用される。遠距離行動戦車群の任務は敵陣地帯の後方に突入して、敵の予備隊、司令部および主力砲兵群を叩き、敵主力の退路を遮断することにある。基本的には歩兵と歩兵支援戦車群が敵陣地帯第一線を突破し、防御火力に混乱が生じた時に投入される。投入時は大隊ごとに砲兵火力の支援をうけられる。敵陣地が堅固な場合は、歩兵が敵陣地帯第一戦を制圧し、戦車の進撃路を確保してから投入される。また砲兵支援火力を欠いた上での投入は固く禁じられている。 機械化軍団 主に作戦次元で運用され、軍か正面軍(戦線)の直轄となる。正面軍直轄時には3個軍団で1つの作戦集団が編成される。その任務は戦略次元での包囲翼を形成し、敵の背面や側面を突き、主力の退路を遮断することにある。攻撃時には第一梯団の後方に配置され、防御作戦でも機動的に運用される。 戦略騎兵 内戦時に赤軍の機動部隊として活躍した騎兵軍は、戦車部隊の配備後も露外機動力を期待され存続した。森林や沼沢地の多い欧露では不整地踏破能力の高い騎兵の価値は高く、軍の機械化とともに騎兵の機械化が推進された。こうして十分な火力と打撃力を付与された機械化騎兵が編成され、大祖国戦争でも活躍することになる。1930年後半には各騎兵師団に1個戦車連隊(64両)が配備され、騎兵軍団には2個戦車連隊と1個対戦車自走砲連隊が配備された。その任務は機械化兵団同様、包囲翼の形成、敵背後への突入、突破口の拡大、追撃行動など機動力を生かしたものとなっている。兵員輸送車両の開発が遅れていた赤軍は、機械化騎兵で不整地領域での機動力、打撃力を補い縦深攻撃理論を完成させた。
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