栽培植物に現れる適応現象
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 15:05 UTC 版)
「栽培植物」の記事における「栽培植物に現れる適応現象」の解説
ヒマワリと、その原種とされるHelianthus giganteus(英語版)。油料作物として栽培されるヒマワリは頭花が大きく側枝の無いものが選択されたと考えられる。 栽培植物に現れる適応現象として以下のものが知られている。 非脱粒性の出現 イネ類の野生植物は種子が熟すと自然に脱粒して播種する仕組みを持つが、栽培化されたイネはこの特性が失われているため収穫性がよく、軸から種子を引き離すために脱穀が行われる。 発芽抑制の欠如 イネ類の野生植物では種子が地面に落下しても即座に発芽することなく一定期間休眠する。この特性を休眠性と呼ぶが、栽培化によってこれが失われ、人為的に播種された後に短期間で発芽するようになり栽培が管理しやすくなった。こうした変化は、発芽の悪い(休眠している)種子が間引かれたことで無意識に選抜が行われたとされる。 器官の大型化 根が大型化したダイコン類など、利用される器官が大型化・特殊化するもの。葉菜・根菜・イモ類・果実などに顕著である。 完熟期の同時性 野生植物ではバラつきがあった完熟期が、栽培化によって同時に完熟を迎えるようになり、収穫性がよくなった。 つる性から草性へ ダイズのように栽培化によってつる性が失われて草性に変化したものや、トマトのようにツルの伸育性が有限になったものがある。 他殖性から自殖性へ トウガラシやイネなどは限られた個体数でも確実に収穫が得られるよう、生殖様式が自殖性に変化した。 不稔性への変化 バナナやウンシュウミカンのように果肉を最大限に得るために、受粉しても種子をつくらなくなったものがある。 日長性の変化 植物の生育が昼の長さ(日長条件)に支配される事があるが、生育環境に合わせてこれが変化し、耐寒性や耐干性が向上したもの。イネの高緯度での栽培はこの変化によるものとされる。 成分の変化 イネ科穀類のうちもち米は貯蔵デンプンがアミロペクチンのみで粘り気(モチ性)を得た。こうした変化は突然変異種が人為的な選択によって維持されたと考えられるが、東アジアと島嶼部に限定してみられる特性で、食文化と強く結びついた栽培化と考えられる。 毒性の減少 柿やインゲンマメ、ジャガイモなど、有毒成分や苦味成分が少なくなったものがある。
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