核酸医薬
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/06 06:57 UTC 版)
核酸医薬とは天然型ヌクレオチドまたは化学修飾型ヌクレオチドを基本骨格とする薬物であり、遺伝子発現を介さずに直接生体に作用し、化学合成により製造されることを特徴とする。代表的な核酸医薬にはアンチセンス法、RNAi、アプタマー、デコイなどがあげられる。核酸医薬は化学合成により製造された核酸が遺伝子発現を介さずに直接生体に作用するのに対して、遺伝子治療薬は特定のDNA遺伝子から遺伝子発現させ、何らかの機能をもつ蛋白質を産出させる点が異なる。核酸医薬は高い特異性に加えてmRNAやnon-coding RNAなど従来の医薬品では狙えない細胞内の標的分子を創薬ターゲットにすることが可能であり、一度プラットフォームが完成すれば比較的短時間で規格化しやすいという特徴がある。そのため核酸医薬は低分子医薬、抗体医薬に次ぐ次世代医薬であり癌や遺伝性疾患に対する革新的医薬品としての発展が期待されている。 ホミビルセン Fomivirsen(英語版)は1998年にFDAで承認された核酸医薬である。AIDS患者のCMV性網膜炎に対する硝子体内局注するアンチセンス核酸である。サイトメガロウイルス遺伝子のIE2のmRNAを標的としている ミポメルセン Mipomersen(英語版)は2013年にFDAで承認された核酸医薬であり、全身投与可能な核酸医薬としては初である。皮下注射で投与する。ホモ接合型家族性高コレステロール血症の治療薬である。ApoB100 mRNAを標的としておりた2’-MOE修飾がされている。 ヌシネルセン ヌシネルセンは2016年にFDAで承認された核酸医薬であり髄液中に投与する。脊髄性筋萎縮症の治療薬である。18塩基のアンチセンスオリゴヌクレオチドである。すべての核酸がホスホチオエート化され、2'-MOEの修飾がされたRNA誘導体になっている。このためRNase H依存性のmRNAの分解は起こらない。イントロンに結合することでスプライシング機構を阻害しエクソンインクルージョンを行う。脳脊髄液内の濃度が4 - 5か月保たれるため投与開始時は2か月で4回投与するが、その後は4か月毎の投与になる。 ペガプタニブ ペガプタニブ(商品名マクジェン)は2004年にFDAで承認され、2008年からは日本でも承認された核酸医薬である。加齢性黄斑変性症に対する硝子体内局注するアプタマーである。VEGFと結合することで血管新生を抑制する核酸医薬である。プリンあるいはピリミジンのリボースの2’位のOH基がそれぞれフッ素基あるいはO-Me基に置換し、さらにPEG鎖を結合している。 エテプリルセン Eteplirsen(英語版)(商品名 Exondys 51)はデュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する治療薬であり2016年にFDAに承認された。モルフォリノオリゴを用いたジストロフィン遺伝子のエクソン51を標的としたものである。エクソンスキップ法である。 パチシラン パチシランはアルナイラム社が開発した脂質ナノ粒子に封入されたRNAiの静脈注射剤であり2017年にFDAに申請された。トランスサイレチン型の家族性アミロイドポリニューロパチーの治療薬である。
※この「核酸医薬」の解説は、「分子標的治療」の解説の一部です。
「核酸医薬」を含む「分子標的治療」の記事については、「分子標的治療」の概要を参照ください。
Weblioに収録されているすべての辞書から核酸医薬を検索する場合は、下記のリンクをクリックしてください。

- 核酸医薬のページへのリンク