クエン酸
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/09 17:35 UTC 版)
クエン酸 | |
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識別情報 | |
3D model (JSmol)
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ChEBI | |
ChEMBL | |
ChemSpider | |
DrugBank | |
ECHA InfoCard | 100.000.973 |
EC番号 |
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E番号 | E330 (酸化防止剤およびpH調整剤) |
IUPHAR/BPS
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KEGG | |
PubChem CID
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RTECS number |
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UNII | |
CompTox Dashboard (EPA)
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特性 | |
化学式 | C6H8O7 |
モル質量 | 192.12 g mol−1 |
外観 | 白色の固体 |
匂い | 無臭 |
密度 | 1.665 g/cm3 (無水物) 1.542 g/cm3 (18 °C, 一水和物) |
融点 | 156 °C, 429 K, 313 °F |
沸点 | 310 °C, 583 K, 590 °F (175 °Cで分解[4]) |
水への溶解度 | 54% w/w (10 °C) 59.2% w/w (20 °C) 64.3% w/w (30 °C) 68.6% w/w (40 °C) 70.9% w/w (50 °C) 73.5% w/w (60 °C) 76.2% w/w (70 °C) 78.8% w/w (80 °C) 81.4% w/w (90 °C) 84% w/w (100 °C)[3] |
溶解度 | アセトン、エタノール、ジエチルエーテル、酢酸エチル、DMSOに溶ける。 ベンゼン、クロロホルム、二硫化炭素、トルエンに溶けない。[4] |
エタノールへの溶解度 | 62 g/100 g (25 °C)[4] |
酢酸アミルへの溶解度 | 4.41 g/100 g (25 °C)[4] |
ジエチルエーテルへの溶解度 | 1.05 g/100 g (25 °C)[4] |
1,4-ジオキサンへの溶解度 | 35.9 g/100 g (25 °C)[4] |
log POW | −1.64 |
酸解離定数 pKa | pKa1 = 3.13[5] pKa2 = 4.76[5] pKa3 = 6.39,[6] 6.40[7] pKa4 = 14.4[8] |
屈折率 (nD) | 1.493–1.509 (20 °C)[3] 1.46 (150 °C)[4] |
粘度 | 6.5 cP (50% aq. sol.)[3] |
構造 | |
単斜晶系 | |
熱化学 | |
標準定圧モル比熱, Cp |
226.51 J/(mol·K) (26.85 °C)[9] |
標準モルエントロピー S |
252.1 J/(mol·K)[9] |
標準生成熱 (ΔfH⦵298)
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−1543.8 kJ/mol[3] |
高位発熱量 (HHV)
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1985.3 kJ/mol (474.5 kcal/mol, 2.47 kcal/g),[3] 1960.6 kJ/mol[9] 1972.34 kJ/mol (471.4 kcal/mol, 2.24 kcal/g) (monohydrate)[3] |
危険性 | |
労働安全衛生 (OHS/OSH): | |
主な危険性
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皮膚および目に刺激性 |
GHS表示: | |
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Warning | |
H290, H319, H315[5] | |
P305+P351+P338[5] | |
NFPA 704(ファイア・ダイアモンド) | |
引火点 | 155 °C (311 °F; 428 K) |
345 °C (653 °F; 618 K) | |
爆発限界 | 8%[5] |
致死量または濃度 (LD, LC) | |
半数致死量 LD50
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3000 mg/kg (ラット, 経口) |
安全データシート (SDS) | HMDB (PDF) |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
クエン酸(クエンさん、枸櫞酸、英: citric acid)は、柑橘類などに含まれる有機化合物で、ヒドロキシ酸のひとつである。爽やかな酸味を持つことから食品添加物として多用される。
枸櫞(くえん)とは漢名でマルブシュカン(シトロン)を指す。レモンをはじめ柑橘類に多く含まれていることからこの名がついた。柑橘類の酸味はクエン酸の味に因るものが多い。また、梅干しにも多量に含まれている。
性質
分子量は192.125。CAS登録番号は[77-92-9](無水物)、[5949-29-1](一水和物)。カルボキシ基を3個有する弱酸。
水溶液は弱酸性(pKa = 2.87)を呈する。常温で無色あるいは白色の固体であり、無水物と一水和物の結晶がある。両者とも揮発性は無く無臭である。潮解性をしめすため保存には注意を必要とする[10]。一水和物は加熱すると100 °Cで融解し、130 °Cに保つと融点153 °Cの無水物となる。175 °C以上では分子内脱水によりアコニット酸となる。金属イオンとキレート錯体を作ることが知られている。
生体内物質
クエン酸は、生体内ではクエン酸回路の構成成分であり、オキサロ酢酸とアセチルCoAとの反応によって生成する。また、クエン酸は、クエン酸回路でアコニット酸ヒドラターゼ(EC 4.2.1.3)によってcis-アコニット酸を経て異性化されイソクエン酸となる。またクエン酸は解糖系のホスホフルクトキナーゼ活性を阻害し、解糖系からクエン酸回路への流入を調節する因子の1つでもある[11]。
製法
工業的にはデンプンあるいは糖をコウジカビの一種Aspergillus niger(クロコウジカビ) で発酵させて作られている。1919年に製薬企業のファイザーが、初めてクエン酸の工業生産に成功した。
存在
レモンジュース、トマトピューレ、ルビー種のグレープフルーツジュースやオレンジジュース、食酢などに多い。
利用
ヒトの摂取

主にクエン酸回路によるエネルギー生産を謳い、各種サプリメントの成分として多用されている。しかし、5 km走での実験から、運動成績を有意に向上させることが報告されたが、その後否定されている[12][13]。このほか、高強度運動や600 m走でも運動成績には影響がないことが示されている[14][15]。
他にも、クエン酸回路において間接的に筋肉内の乳酸を分解する点からかつては運動後の疲労軽減効果作用も言及されていたものの、乳酸疲労物質説は今日では否定されており[16]、売り文句としてはあまり有為ではない。
ただし、クエン酸自体は疲労物質の一つとされるカルシウム[17]ともキレート錯体を構成するため、このカルシウムとの結合が乳酸分解におけるアシドーシス低下とのトレードオフにおいて汎的に有位であるならば、疲労軽減に若干は効果が認められることとなる。
同様に、鉄を中心としたミネラルイオンともキレート錯体を構成して吸収性を高めることから、運動成績向上機能ではなく、栄養機能的側面から見れば、運動後におけるクエン酸の摂取は、決して無駄とは言いがたい。また、運動後はブドウ糖を単体でとるよりも、クエン酸を加えた方が、グリコーゲンを多く貯蔵できるとの説も存在する[18]。
日本薬局方収載品であり、ドラッグストアでも第三類医薬品として市販されている。クエン酸の塩は血液凝固因子の一つであるカルシウムイオンとキレート結合するので、成分献血や血液凝固機能検査のサンプル採取などにおいて抗凝固薬としても利用される。
クエン酸ナトリウム・クエン酸カリウム合剤(商品名ウラリット配合錠)は、体液成分のアニオン性電解質の増大にともない利尿作用を励起し尿酸の排泄を促進することから、痛風に代表される高尿酸血症の治療薬として処方されるとともに尿路結石や代謝性アシドーシスの治療にも使用される[注 1]。オルニチン同様、肝機能低下による疲労臭に対する低減効果も流布されているが、真偽を別とし、この場合はまず肝機能低下の原因を、専門医の診断のもと特定したうえで適切に摂取すべきである。
食品添加物でもあり、清涼飲料水や炭酸水を始め、各種の加工食品に添加される。
洗浄
炭酸カルシウムを容易に溶かしてしまうことから、便器の尿石・浴室・電気ポット・加湿器内部に溜まった水垢の洗浄に用いられている。湯100ccにクエン酸小さじ1と食塩小さじ2を溶き、キッチンペーパーに染み込ませて水垢に張り付け、乾燥防止にラップでカバーをすると効果が高い。[10][12]
肥料
肥料の成分がクエン酸の2%水溶液に溶解する性質を「く溶性」という言葉で表すが、これは植物の根が分泌する根酸には溶けにくいがもう少し強い酸には溶けることを意味し、徐々に溶け出してゆっくり吸収されることを示す。
クエン酸塩
アルカリ金属塩の正塩はいずれも水に可溶、アルコールに難溶で水溶液は弱アルカリ性を示す。重金属塩は水に不溶なものが多いが、クエン酸イオンが過剰にあると複数配位することで水溶性となるものもある。
- クエン酸ナトリウム
-
二水和物が安定で、化学式
2O


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