東京三審
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 17:54 UTC 版)
2013年4月2日、最高裁判所第3小法廷は、国への請求について遺族側の上告を受理しない決定をした。製薬会社への請求については上告を受理し、口頭弁論を開かず、判決を2013年4月12日に指定した。 2013年4月12日、最高裁は、「副作用の存在をもって直ちに製造物として欠陥があるということはできない」「引渡し時点で予見し得る副作用について,製造物としての使用のために必要な情報が適切に与えられることにより,通常有すべき安全性が確保される」「上記添付文書の記載が適切かどうかは,上記副作用の内容ないし程度(その発現頻度を含む。),当該医療用医薬品の効能又は効果から通常想定される処方者ないし使用者の知識及び能力,当該添付文書における副作用に係る記載の形式ないし体裁等の諸般の事情を総合考慮して,上記予見し得る副作用の危険性が上記処方者等に十分明らかにされているといえるか否かという観点から判断すべきものと解するのが相当」とする判断基準を示し、「通常想定される処方者ないし使用者は上記のような肺がんの治療を行う医師」と認定して、その医師には「イレッサ投与により間質性肺炎を発症した場合には致死的となり得ることを認識するのに困難はなかったことは明らか」で、その認識は「記載の順番や他に記載された副作用の内容,本件輸入承認時点で発表されていた医学雑誌の記述等により影響を受けるものではない」とし、緊急安全性情報発出時に判明した重篤な副作用は「本件輸入承認時点までに行われた臨床試験等からこれを予見し得たものともいえない」として、第1版の添付文書の記載が不適切とは言えないとして、裁判官全員一致の意見として上告を棄却した。 裁判官田原睦夫は、補足意見として、事後の知見に基づいて流通におかれた時点に遡及して製造物責任法の「欠陥」を認定することを否定し、それ以前に流通しているものは製造物責任の問題ではない、重篤な副作用が一定の確率で不可避的に発生し得る医薬品であっても、その薬効が必要とされる場合は、「通常有すべき安全性」を欠いているのではなく、「許された危険」の問題として捉えるべき、「間質性肺炎」を致死的な可能性のある「重大な副作用」欄に記載したことは必要かつ十分な記載であったと述べている。裁判官岡部喜代子は、補足意見として、原審は積極的に因果関係が認められる症例のみ考慮すれば良いかのような誤解を与えるが、因果関係を否定できない症例をも認定しており、その症例を持ってしても、イレッサ特有の間質性肺炎の急速な重篤化は予見できなかったと述べている。裁判官大谷剛彦および大橋正春は、補足意見として、承認当時の概括的な予見に基づいた注意喚起を記載しても指示・警告としての効果に疑問がある、有効な新薬の早期使用についての厚生労働大臣の行政判断に合理性があれば、その結果について医薬品の輸入・製造者に厳格な責任を負わせることは適当ではないと述べている。
※この「東京三審」の解説は、「イレッサ訴訟」の解説の一部です。
「東京三審」を含む「イレッサ訴訟」の記事については、「イレッサ訴訟」の概要を参照ください。
- 東京三審のページへのリンク