曝露源
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/18 18:30 UTC 版)
1950年代から1960年代にかけてはカドミウムの高レベルの産業曝露がみられたが、カドミウムの毒性が明らかになるにつれ、ほとんどの先進工業国では産業規制によりカドミウムの曝露を減少させた。しかしさらに曝露を減少させる必要があるという点で多くの国の行政当局の見解が一致している。 工業地域では、カドミウムの蓄積による水質汚濁、大気汚染、土壌汚染が挙げられる。カドミウムを大気中に排出する有害廃棄物処理場や工場付近の住民は、空気中に含まれるカドミウムに曝露する可能性がある。 鉱山から排出される鉱毒による鉱害もカドミウムの重要な曝露源である。日本における環境的曝露の大規模な例として、足尾銅山での鉱毒事件、神岡鉱山の排水で汚染された神通川流域の灌漑用水で育てた米を食べていたことによるイタイイタイ病が挙げられる。 食物もカドミウムの曝露源のひとつである。非工業地域の植物中にはカドミウムは少量または中等量しか含まれないが、成熟動物の肝臓や腎臓から高濃度のカドミウムが検出されることがある。 タバコもカドミウムの重要な曝露源である。一般にタバコに含まれるカドミウムは食物ほど多くないが、肺は胃よりもカドミウムの吸収率が高い。喫煙者だけでなく周囲の者も受動喫煙により曝露される。 金属精錬工場や、電池、塗料、合成樹脂のようなカドミウム含有製品を製造する工場では、工場勤務者が空気中のカドミウムに曝露する可能性があり、カドミウムを含む金属のめっき、溶接によって曝露する可能性もある。カドミウムを使って作業する場合、有毒ガスから身を守るためドラフト装置の下で作業を行うことが重要となる。例えばカドミウムを含む銀ハンダは取り扱いに細心の注意を要する。カドミウムメッキ溶液への長期間の曝露の結果、これまでに深刻な中毒問題が発生している。 アメリカではカドミウム曝露の可能性のある環境で働いている労働者は51万2千人に上る。しかし現在の規制では、曝露の許容基準を設けて労働者を保護し、また空気中のカドミウム濃度を有害な影響を招くと考えられるレベルよりも大幅に低い値に抑えるようにしている。アメリカでは多数の州法規や連邦法規により廃棄物処理場や焼却施設から大気中に排出されるカドミウムの量が規制されているため、適切に処理されている施設では危険性はないが、違法な排出または事故により汚染された食物、粉塵、水などを通して付近の住民が大規模にカドミウムに曝露するおそれがあり、そのような排出を防ぐため、多数の法令や公害物質の使用規則が制定されている。 明るいオレンジ、赤、黄に多く用いられるカドミウム顔料を使う画家・芸術家は、特にチョークパステルなどの乾燥顔料を使ったり、独自に顔料を混ぜる際に、誤って危険量を吸い込んでしまうことが少なくない。 肥料に用いるリン酸塩の原料の中には100 mg/kg もの高濃度のカドミウムを含有するものがあり、土壌中のカドミウム濃縮を促進させかねない(たとえばニュージーランドなど)。 1960年代前半にノリッジで行われたカドミウム散布実験に関する文書について、近年イギリス政府が機密指定を解除したことが BBC のニュースで報道された。
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