映画監督の評価と影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 12:19 UTC 版)
国内外の多くの映画監督が黒澤の影響を受け、その作品を賞賛している。黒澤と同時期に活躍したイングマール・ベルイマンは、自作の『処女の泉』(1960年)を「黒澤の観光気分のあさましい模倣」と述べている。フェデリコ・フェリーニは黒澤作品を見ることは「アリオストを読むようなものだ」と賞賛している。サタジット・レイは『羅生門』の光の使い方に影響を受けたことを明らかにしている。アンドレイ・タルコフスキーは好きな作品の1本に『七人の侍』を挙げている。ベルナルド・ベルトルッチとヴェルナー・ヘルツォークも、影響を受けた監督の一人として黒澤の名を挙げている。 スタンリー・キューブリックのアシスタントを務めたアンソニー・フルーウィン(英語版)によると、キューブリックは黒澤を偉大な映画監督の一人と考え、高く評価していたという。黒澤もキューブリックを賞賛しており、1990年代後半にキューブリック宛てにファンレターを送ったが、それに感激したキューブリックは返信の内容に悩み、数ヶ月もかけて返事を書き直すも、その間に黒澤が亡くなってしまい、ひどく動揺したというエピソードがある。 1970年代以降のハリウッド映画で活躍したコッポラ、ルーカス、スピルバーグ、スコセッシ、ジョン・ミリアスなどは黒澤を尊敬する師と仰ぎ、それぞれの作品も黒澤から強い影響を受けている。コッポラは「私たち(ルーカスとコッポラ)は黒澤監督の"芸術的な息子"といっていい存在」と語り、黒澤をノーベル文学賞に推薦しようとしたことがある。コッポラの監督作『ゴッドファーザー』(1972年)の冒頭の結婚式のシーンは、『悪い奴ほどよく眠る』の影響を受けている。スピルバーグは黒澤を「現代の映画界におけるシェイクスピア」と評し、「映画製作者としてのぼくの仕事に多大な影響を与えた。映像はもちろんアートにおけるぼくの審美眼は、彼の影響を受けている」と述べている。 また、アレクサンダー・ペインは黒澤のファンで、『七人の侍』『赤ひげ』を好きな映画に挙げている。アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥは19歳の時に見た『生きる』に衝撃を受けたことを明かし、自身の作品である『BIUTIFUL ビューティフル』を製作した際に影響を受けたことを認め、黒澤を「映画のストーリーの構成を変えようとした天才のうちの一人」と高く評価した。ウェス・アンダーソンはアニメーション映画『犬ヶ島』(2018年)で黒澤の影響を受けていることを明言している。そのほか、サム・ペキンパー、アーサー・ペン、リドリー・スコット、ジョージ・ミラー、ジョン・ウー、チャン・イーモウ、三池崇史、塚本晋也、助監督を経験した森谷司郎と小泉堯史などが黒澤の影響を受けている。
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