映画制作の顛末
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/25 02:24 UTC 版)
当初の制作費は1100万ドル。しかし、完成していた通りのセットが「馬が通れないから」との理由で改築させたり、ほんの一部しか映っていない機関車を撮るために当時走っていた実際の機関車を調達させたり、エキストラを大幅に増やしたり、撮影では撮り直しを繰り返したため、制作費を大幅にオーバーした。それでもユナイテッド・アーティスツは撮影を続けたために予算は4400万ドル(約80億円)にまで膨れ上がった。撮影されたフィルムは約46万メートルに及ぶ。 最初に編集されたバージョンは5時間30分というあまりに長すぎるものだった。そのため、UAは難色を示し、多くのシーンが削られ219分にまとめられプレミアム公開された。しかし、あまりの評判の悪さに、急遽149分の短縮版が作られ、一般公開はそれに差し替えられた。 この上映時間の大幅短縮による構成の破綻、アメリカ人の神経を逆撫でするようなテーマに対するマスコミの酷評などが祟り、映画は全くヒットせず1週間で興行を打ち切られ、チケットの払い戻しが殺到した。また台詞が音楽に隠されるなど不備も多く、第2回ゴールデンラズベリー賞の最低監督賞を受賞するなど評価も散々だった。映画の興行成績は348万ドルであり、莫大な赤字を出した。これによって制作会社ユナイテッド・アーティスツは経営危機においこまれた。新聞には「Heaven turns into Hell(天国の門から地獄の門へ)」という見出しが載った。なお、一時期『ギネスブック』に「史上最悪の赤字を出した映画」として掲載されている。ユナイテッド・アーティスツはメトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)が救済合併してMGM/UAとなったが、そのMGM/UAも『インチョン!』で大赤字を出すこととなった。ちなみに2013年現在では1995年の映画で同じくMGM/UA制作の『カットスロート・アイランド』が同記録を有する映画として掲載されている。 しかし、撮影や美術の美しさ、壮大な物語構成など注目すべき点も多く、公開後数十年経った現在ではやや再評価の兆しもあり、ヨーロッパや日本では公開時から高い人気を得ている作品である。なお、ヨーロッパでは概ね、オリジナルの219分版が公開された。日本では一般に公開されたのは短縮版だったが、数年後、219分版も上映された。また、2012年にはディレクターズ・カット版として、216分に再編集された物が公開されている。 監督であるマイケル・チミノは、この作品の公開から5年が経過した1985年、ディノ・デ・ラウレンティスのプロデュースによる『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』で監督復帰を果たしたものの、かつてのような自由な映画製作を行う事は出来きず、以降の作品は興行的に成功したものは1つもないまま、2016年7月2日、自宅で死去したことが発表された。
※この「映画制作の顛末」の解説は、「天国の門」の解説の一部です。
「映画制作の顛末」を含む「天国の門」の記事については、「天国の門」の概要を参照ください。
- 映画制作の顛末のページへのリンク