日本国外との比較
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 03:00 UTC 版)
アメリカ合衆国の20米ドル紙幣などは、中額紙幣として市中での流通量が特に多いことから、日本でも二千円紙幣が同様の役割を果たすことが期待された。 当時世界で紙幣を発行していた国や地域のうち7割以上で「2」の単位の紙幣が発行されており、主要先進国においてはアメリカでは20米ドル紙幣が流通枚数の25%、イギリスでは20ポンド紙幣が34%、フランスでは200フラン紙幣が32%、ドイツでは20マルク紙幣が17%と、いずれも最多の流通枚数を占めていた。一方で日本では紙幣の流通枚数のほとんどを一万円紙幣と千円紙幣が占めており、中額面の五千円紙幣の流通は非常に少ない状態であるため、市中に流通する紙幣の偏った券種構成を改善できる可能性があると見られていた。 しかし、二千円紙幣は流通量が非常に少ない紙幣となっている。この違いは現金の流通実態に原因があると考えられる。治安が良くない国では、現金は盗難や強盗で奪われてしまう恐れがあるため必要以上に持ち歩かない。さらに高額紙幣となると偽札を警戒して、相手に受け取ってもらえないという問題も重なる。そのため100米ドル紙幣のような高額紙幣は発行量こそ多いものの、もっぱら蓄財や資金洗浄の地下経済に使われ、日常生活で使用する機会が少ない紙幣である。そこで高額紙幣に次ぐ中額紙幣である20米ドル紙幣がよく流通しているというのが現状である。そのような国家で中額紙幣で嵩張るような高額決済は、クレジットカードやデビットカード、小切手を用いており、制度が発達している傾向がある。 日本では二千円紙幣が普及しない理由について、数学者の西山豊は「東西における奇数と偶数の文化の違いがあるのではないか」と考察している。結婚式の祝儀は1万円、3万円、5万円と奇数になっている。2や4などの偶数は「2」で割り切れる、つまり「割れる」「別れる=分かれる(分裂)」という意味に通じるため、縁起の悪い数として避けられる。2万円にするなら1万円札1枚と5千円札2枚の合計3枚にする。このような文化は欧米にない。欧米では20ドル紙幣(アメリカ合衆国)・20ポンド紙幣(イギリス)・20ユーロ紙幣などが普及しているが、50ドル紙幣・50ポンド紙幣・50ユーロ紙幣などは普及していない。奇数(odd number)は、odd socks(左右ちぐはぐの靴下)・odd hand(臨時雇い)として嫌われる。 中華民国(台湾)にも2000元紙幣・200元紙幣・20元硬貨があるがあまり流通していない。これに対して、中華人民共和国の20元札、ベトナムの2千ドン札・2万ドン札・20万ドン札、フィリピンの20ペソ札、タイの20バーツ札は、広く一般的に流通している。 なお、沖縄県では例外的に二千円紙幣が広く使用されている。2020年(令和2年)7月時点で、二千円紙幣の流通量は全国で約9,700万枚だが、沖縄県では約700万枚出回っており、増加傾向にある 。理由として、沖縄県庁と経済界が一丸となって二千円紙幣の流通促進を行った他、アメリカによる沖縄統治時代にアメリカ合衆国の20米ドル紙幣を使い慣れていた歴史があるとの仮説もある。
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