日本の地下鉄の経営状況
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/10 14:06 UTC 版)
「日本の地下鉄」の記事における「日本の地下鉄の経営状況」の解説
地下鉄は建設費が高額なため、新しく建設された路線は建設費の償却負担が重く、赤字経営となっているのが多い。それに対して、都市経営の観点から一等地を通る優良路線から建設された側面もあり、古い路線ほど利用客の多いルートを通っている上、インフレの進む前のコストが安い時期に建設されて償却費負担が軽いため、銀座線、丸ノ内線、御堂筋線、東山線などの歴史ある路線はすべて黒字経営である。そのため、こうした古くから営業している償却負担が少なくて利用者の多い優良路線を多数抱え、新線建設が比較的少ない東京地下鉄は黒字経営となっている。 日本の公営地下鉄は、地方自治体経営における交通部門の施策の一つとして、鉄道単体の収支以外に地下鉄建設による環境負荷軽減効果、渋滞緩和効果、地価上昇効果、税の増収効果、住民の便益向上効果などを、総合的に判断して経営されている。 民鉄やJRの経営状況を鉄道事業以外の小売事業やカード事業など母体会社の連結対象となる事業を含めた決算資料で判断しなければ、適正な経営状況を把握できないのと同様、地方自治体の地下鉄事業による総合的な収支の把握は、その連結対象となる経済効果の経済価値を含めて判断しなければならない。 しかし、現状では、地下鉄事業によって波及して発生している経済効果を把握していく適切かつ統一した会計基準がないばかりか、地下鉄事業本体の会計に至っても適切かつ統一した会計基準がない状況である。 例を挙げれば、減価償却費を各自治体が、どのように計上していくかによって決算の数字が大きくブレる可能性がある。また札幌市営地下鉄や福岡市地下鉄のように赤字分を市一般会計から補填するかたちで総額のうえで黒字計上としている場合もある。 以下に示すのは、各社局によって公表されている「地下鉄決算」の断片を拾ったデータだが、通常、よく目にする損益計算書とは意味が大きく異なる資料であることを認識して取り扱わなければ地下鉄事業の意義を見誤ることになる。 ▲は赤字を示す。 公営地下鉄名称会計年度純損益累積欠損金出典札幌市営地下鉄 平成30年度 約94億9704万円 約2188億1653万円 仙台市地下鉄 平成30年度 ▲約18億9667万円 約943億2920万円 都営地下鉄 平成30年度 約366億4900万円 約2237億8400万円 横浜市営地下鉄 平成30年度 約87億9100万円 約1517億1600万円 名古屋市営地下鉄 平成30年度 約168億7200万円 約2140億9400万円 京都市営地下鉄 平成30年度 約23億3300万円 約3051億6900万円 神戸市営地下鉄 平成30年度 約22億5700万円 約 747億1300万円 福岡市地下鉄 平成30年度 約76億5636万円 約1166億6440万円 民営・準公営(第三セクター)地下鉄(連結決算)事業者名会計年度純損益利益剰余金合計出典東京地下鉄 平成30年度 約607億0900万円 約5472億2300万円 埼玉高速鉄道 平成30年度 約57億1000万円 ▲約0億0万円 横浜高速鉄道 平成30年度 約9億0943万円 ▲約107億2366万円 大阪市高速電気軌道 平成30年度 約340億0000万円 ▲約0億0万円
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