日本における供託金
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/14 22:54 UTC 版)
衆院選・参院選の比例区に名簿を提出する政党・政治団体および比例区選挙・町村議会議員選挙を除く公職選挙の立候補者は、供託所(法務局・地方法務局の本局・支局・出張所)に所定の金額を現金または国債証書(振替国債を含む)により供託した上で、立候補の届出に際し供託を証明する書面(供託書正本)を提出しなければならない(公選法92条)。 衆院選・参院選の比例区では名簿届出政党等が獲得した議席数に応じて供託金の全額または一定額が返還され、残額は没収される。それ以外の選挙では被選挙人の得票数が公選法92条所定の得票数(供託金没収点)を上回った場合には全額が返還され、下回った場合には全額が没収される。また立候補届出後に届出を取り下げた場合や立候補を辞退した場合にも全額が没収される。没収された供託金は国政選挙の場合は国庫に、地方選挙の場合は当該地方自治体に帰属する(公選法93条・94条)。 2021年現在の供託金の金額および供託金没収点は以下の通りである。補欠選挙の場合もこれに準ずる。 日本の公職選挙における供託金の金額および供託金没収点選挙の種類供託金の金額供託金没収点衆院選(小選挙区)300万円 有効投票総数の10分の1 衆院選(比例区)名簿単独登載者数×600万円+重複立候補者数×300万円 (注1) 参院選(選挙区)300万円 有効投票総数と議員定数(注2)の商の8分の1 参院選(比例区)名簿登載者数×600万円 (注3) 都道府県知事選挙300万円 有効投票総数の10分の1 市長選挙(政令指定都市)240万円 市区長選挙100万円 町村長選挙50万円 都道府県議会議員選挙60万円 有効投票総数と議員定数(注2)の商の10分の1 市議会議員選挙(政令指定都市)50万円 市区議会議員選挙30万円 町村議会議員選挙15万円 表中所定の金額を供託した名簿届出政党等は「選挙区で当選した重複立候補者数×300万円+比例区議席割り当て数×2×600万円」の範囲で供託金の返還を受けられる。例えば、重複立候補者3名と単独立候補者2名を比例区に立て、重複立候補者2名が選挙区で当選し、比例区で1議席の割り当てを受けた政党の供託金は(3×300万円+2×600万円=)2100万円であり、そのうち返還を受けられるのは(2×300万円+1×2×600万円=)1800万円となる。 ここでいう「議員定数」は参議院議員選挙においては通常選挙における当該選挙区内の議員の定数(非改選期の補欠選挙を同時執行するために通常選挙より定数が多くなる場合はその定数)、地方議会議員選挙においては当該選挙区内の議員の定数(選挙区がないときは議員の定数)のことを指す。補欠選挙の場合も通常時の議員定数を参照することに注意。 表中所定の金額を供託した名簿届出政党等は「比例区議席割り当て数×2×600万円」の範囲で供託金の返還を受けられる。 過去の選挙において、選挙運動用のはがきなどを、他の陣営に横流しして売買した候補や、選挙公報等を用いて、特定の商品の宣伝を行った政党などが問題になったため、選挙公営が充実している選挙ほど、供託金の額が高額になっている。 なお、供託金没収点を下回った場合は、選挙公営による公費負担の一部を受けられなくなる。具体的には、選挙運動用自動車の使用(公選法141条7項)、はがき・ビラの作成(同142条10項)、看板・ポスター等の作成(同143条14項)、演説会用の立札等の作成(同164条の2、6項)などを自費で賄わなければならなくなる。また衆院選の重複立候補者で、供託金没収点を下回った者は、比例復活当選の資格を失う(同法95条の2、6項)。 2005年(平成17年)の第44回衆議院議員総選挙に東京都第22区から立候補した日本共産党の若林義春は、小選挙区と比例代表に重複で立候補し、かつ共産党の比例名簿で唯一の1位だった。日本共産党は比例東京ブロックで1議席を獲得し、小選挙区で落選していた若林が復活当選したかに見えた。しかし小選挙区での得票数が供託金没収点を下回っていたため、前述の規定により、若林は復活当選の資格を失い、名簿2位で比例単独候補だった元参議院議員の笠井亮が繰上当選となった。また、2021年(令和3年)の第49回衆議院議員総選挙ではれいわ新選組が衆院選比例東海ブロックで1議席獲得可能な得票であったが、小選挙区との重複立候補者として比例名簿に登載されていた2候補が小選挙区の有効投票総数の10%を下回り供託金が没収されるため、公職選挙法の規定に基づいて名簿から削除された。れいわ新選組には比例東海に単独候補がいなかったため、この1議席は次点の公明党候補が獲得した。
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