文献学と娯楽作品
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/24 04:41 UTC 版)
ギリシアの諸ポリスは、アレクサンドロスの統一とオリエント征服によって事実上消滅した。アレクサンドロスはエジプトに自己の名を付けた新都を建設した。エジプトを継承したディアドコイの一人プトレマイオスはそこに世界最大と称されたアレクサンドレイア図書館を建造し、夥しい蔵書の収集に着手すると共に、ヘレニズムの世界に優秀な学者を求めた。今日伝存する多くの古代の文献・文書はこの時代に編纂され、あるいは筆写され写本として残ったものである。 図書館はアレクサンドレイア以外にもペルガモンなどが著名であった。図書館は鎖されていたとはいえ、高い評価を受けた作品は、筆写されて、教養人・貴族などに広がっていった。図書館は大量の書物について、その内容要約書をまた編集していた。長い原著を読むよりも、学者が整理した原著の要約を読むことで、無教養な俄成金などは自己の見せかけの知識を喧伝できた。あるいは諸種の伝説について、主題ごとの見取り図を与えるために書籍が編纂された。このような「集成」本のなかでも、もっとも野心的であったのが、紀元前2世紀のアテーナイの文献学者アポロドーロスのものと長く考えられていた、アポロドーロスの『ビブリオテーケー』(ギリシア神話文庫)である。 一方、帝政ローマ期の貴族や富裕な階層の人々は、古代ギリシアの神々への崇拝や敬神の念とは関係なく、純粋に面白く色恋の刺激となる物語を好んだ。これらの嗜好の需要に合わせ、オウィディウスなどは、神々への敬神などとは無縁な、娯楽目的の『変身物語』を著し、また同じような意味でアプレイウスは『黄金の驢馬』を著した。オウィディウスの書籍はギリシア神話全体を扱うもので、体系的な著作とも言えるが、しかし気楽に読むことのできる短いエピソードの集成でもあった。
※この「文献学と娯楽作品」の解説は、「ギリシア神話」の解説の一部です。
「文献学と娯楽作品」を含む「ギリシア神話」の記事については、「ギリシア神話」の概要を参照ください。
- 文献学と娯楽作品のページへのリンク