数学と構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/15 23:14 UTC 版)
数学において、ブルバキというグループは、代数的構造、順序的構造、位相的構造の3つを母構造と呼び、公理学を導入することにより数学の形式化を進めた。古典的数学は代数や幾何や解析などのように、異質な事項の集合から成り立っていたが、数学における構造主義学派とも呼ばれるブルバキ学派は全数学を構造に従属させようとしたのであった。この方法論は論理学・物理学・生物学・心理学でも受け入れられることとなった。このような方法論がどのような学問に応用できるのかについては一定のコンセンサスがあったわけではなく、現在、構造主義の祖とされるソシュール自身は構造という用語を用いておらず、自身の理論を言語学以外の分野に拡張することにも慎重であった。 構造主義という用語が広く知られるようになったのは、クロード・レヴィ=ストロースが、このような方法論を人類学に応用し、文化人類学において婚姻体系の「構造」を数学の群論 (group theory) で説明したのが嚆矢である。群論は代数学(抽象代数学)の一分野で、クロード・レヴィ=ストロースによるムルンギン族の婚姻体系の研究を聞いたアンドレ・ヴェイユが群論を活用して体系を解明した。 原則として要素還元主義を批判し、関係論的構造理解がなされる。ソシュールが言語には差異しかないと述べたと伝えられているように、まず構造は一挙に、一つの要素が他のすべての要素との関係において初めて相互依存的に決定されるものとして与えられる。このような構造の理解においては、構造を構成する要素は、原則として構造を離れた独立性を持たない。 厳密に数学の群論にモデルを仰ぐものから、もう少し緩く、多様なバリエーションを持つ現象において、それぞれのバリエーションが、その(必ずしも顕在的に観察されない、事後的に変換群から理論的に抽出された)構成要素の間の組み換えによって生成されたものだと見なしうるとき、その顕在的な一連の変換を規定する潜在的な構造に重心をおいて分析するようなもの全般を包含していわれることもある。発達心理学に抽象代数学を持ち込んだピアジェも、構造主義者の一人である。
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