排気系閉塞性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/30 21:20 UTC 版)
2ストロークオイルのうち、スモークレスタイプのFC、FD規格には排気管の閉塞を防ぐ為にポリブテン(英語版)が添加される事が一般的で、基油に対する添加率が高いほど排気煙は減少し、排気管(チャンバー)の閉塞も起こりづらくなる。これに対して、FB規格では鉱油、モータースポーツ向けオイルや船外機向け生分解オイルではエステルのみが用いられる事が一般的であり、スモークレスタイプと比較して排気系閉塞性は大きく劣る傾向がある。ポリブテン100%の2ストロークオイルと、鉱油またはエステル100%の2ストロークオイルとの間では、排気管閉塞指数上では4倍もの格差が発生する。この事は2ストロークエンジンの初期性能を維持する上では大きな障害であり、初期性能維持の為にポリブテンの添加は不可欠であるとされている。 しかし、ポリブテンの短所として同分子量の鉱油と比較して粘度が高い為に、添加率が多くなるほどトルク損失が大きくなる傾向があり、一度エンジン部品に付着すると新しいオイルとの置換が起きにくくもなる為、特に高回転時におけるクランクシャフトやコネクティングロッドのベアリングの潤滑性が低下して焼きつきが起こりやすくなる事が、2002年の新日本石油とヤマハ発動機の共同実験により判明している。具体的には、ポリブテン40%程度のFC規格油を基準(ベアリング潤滑指数100)とした時、鉱油またはエステル100%のFB規格油は110から120、ポリブテン100%のFC規格油は90前後という格差が発生したという。 2ストロークエンジンのうち、10000rpmを超える超高回転が連続使用される事も珍しくないチェーンソーでは、このポリブテン添加による副作用が特に問題になりやすかった事から、スティール社は自社のチェーンソー向けの純正2ストロークオイル(FB規格)の注意書きに「スティールのチェーンソーには、ポリブテンを配合した低煙オイルは絶対に使用しないで下さい」とまで明記していた程であった。 これらを根拠として、「草刈機やチェーンソーなどの、超高回転域で使用される2ストロークエンジンには、FCやFD規格よりもFB規格の方が向いている」とする意見も一部では見られるが、前述の実験を実施したヤマハ発動機では、2ストロークエンジンの初期性能維持の為にはポリブテンを添加は不可欠であると明言した上で、ベアリングの潤滑性を確保する為に、下記の3項目を提言している。 基油に質の良い鉱油やエステルを選定した上で、ポリブテンの添加量を排気閉塞性や排気煙性能の許す限り少なくする。 ポリブテンの高分子量部分の添加は可能な限り避ける。特に分子量1000以上のものの添加は厳禁である。 上記2点を踏まえた上で、排気閉塞性指数(JASO M343)120以下、排気煙指数(JASO M342)100以下、ロストルク指数(JASO M340)100以上の水準を維持するように2ストロークオイルを開発する事で、ポリブテンを添加してもベアリング潤滑性は十分に確保されるという。
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