所見と診断
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/07 16:47 UTC 版)
身体所見を取る前に、まず眼科医(ないし海外においてはオプトメトリスト)の問診によって、現病歴(特に主訴、及び他の視覚症状)、視機能に影響を及ぼす眼疾患や眼傷害の既往歴、眼疾患の家族歴を調べられる場合がしばしばである。次いでランドルト環等を用いた視力検査を行う。視力検査における矯正視力低下の所見と、ケラトメータ(角膜曲率計)によって、角膜の局所的な曲率を測定し不正乱視(角膜の不規則な収差)を見出せば、円錐角膜の可能性が示唆される。重症例では測定器の計測可能な範囲をこえる場合もある。レチノスコープ(スキアスコープ、検影器)を用いると更に所見を得ることができる。この手法は光源を前後に移動させながら患者の網膜に長方形他の光のビームを収束させ、反射光を観測することで、屈折の程度を見るものである。円錐角膜は「鋏状反射」を示す疾患の一つである。これは鋏の二つの刃のように二つの反射帯が接近したり離反したりする現象である。 円錐角膜が疑われた場合、細隙灯顕微鏡による角膜の眼科的検査が行われる。進行例では特殊な検査を行うまでもなく、この段階で診断が明らかになる。近接した状態で、約半数例でフライシャー輪がみられ、これは酸化鉄であるヘモジデリンが角膜上皮に沈着したものである。フライシャー輪は微かなものなので、見られない場合はコバルトブルーフィルターを通して観察するとよい。同様に、約半数例でフォークト線条 (Vogt's striae) がみられる。これは角膜の菲薄化と緊張とによって生ずる、角膜内の細かな縦線である。この線条は眼球を僅かに圧迫すると一時的に消失する。円錐形が顕著な場合は下方視した際、下眼瞼と角膜の境界がV字型の形状となり、マンソン徴候 (Munson's sign) と呼ばれる。通常は、他の徴候の方がはるかに先に現れるので、古典的な徴候ではあるが、診断学的には重要視されない傾向にある。 ケラトスコープが簡単な非侵襲的検査として用いられることがある。同心円状の光の環をいくつか角膜に投影し、角膜表面の形態をみるものである。さらに確定的な診断法として、角膜形状解析法(角膜トポグラフィ)がある。これは角膜に光のパターンを照射し、その像をデジタル的に取得し計算処理を行って、角膜の形状を自動的に解析する装置である。角膜形状解析法は角膜の微細な歪みを検出することができる。円錐角膜は特徴的な曲率の増加を示す。この増加は通常、眼の下方に強い。この手法を用いればその時々の角膜変形がどの程度であったか、スナップショットを記録することができ、病勢の進行具合を評価するために役立つ。また他の所見が得られない極初期の診断にも特に役立つ。図は放射状角膜切開前の円錐角膜症例である。色は曲率を示し、青い部分が曲率が小さく、赤い部分が大きい。中心部の十字形の下に赤い部分が見られ、円錐角膜に特徴的な不正突出を示している。 円錐角膜が確定したら、以下のように様々な方法で重症度を分類することができる 角膜の曲率による分類(D = ジオプター)軽度 mild(45 D未満) 進行 advanced(45 D以上 52 D以下) 重度 severe(52 D超) 円錐の形態による分類乳頭状 nipple(小型 (5mm) で、角膜中央にある) 楕円状 oval (より大型で、角膜中央より下にあり、しばしば下垂する) 球状 globus(角膜の75%を超えて病変がある) 角膜の厚さによる分類軽度 mild (> 506 μm) 進行 advanced (< 446 μm) 角膜形状解析法の浸透に伴い、一部の臨床家の間ではこれらの用語は使われなくなってきている。
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