憲法に基づく統治権の信託と抵抗権
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/13 03:21 UTC 版)
「憲法」の記事における「憲法に基づく統治権の信託と抵抗権」の解説
イギリスの哲学者ジョン・ロックは1689年に著した「統治二論」(市民政府論)において、統治の構造を自然法論の伝統と社会契約の理論により説明している。 そこでは、立法権や行政権などの統治権は、統治者の武力や外圧によってもたらされるのではなく、生命と財産の保障を望む被治者からの「信託」によって成立すると説いている。トマス・ホッブズが、遡ること47年前の1642年に「市民論」で持ち出した自然状態での「万人の万人に対する闘争」を避けるため、必然的にコモンウェルス(commonwealth)への移行が要請され、コモンウェルスの主権としては、立法権、行政権と連合権(外交権)の三権分立が挙げられ、立法権こそが基軸であるとしている。 またロックは、当時主流であった国王が立法権と執行権の両方を握る「絶対王政」を否定して、 議会が立法に携わる必要があり、議員は議会の制定した法に自ら服さなければならない 統治権者は同意なしに被治者の財産を奪えず、議会が課税同意権を基礎づける といった点を論じているが、他方、行政権を行使する国王は、立法権への拒否権を持ち、刑罰法の執行の緩和・停止の権力を与えられるものと説いている。そのうえで行政権と立法権の双方向のチェックを期待しつつ、人民(people)による「信託」という人民主権の概念を行政府も立法府も侵害した場合に対して、ホッブズが唱えていた「抵抗権」を発展させた「革命権」を提起した。もっとも、統治権の変更を求めるような革命権の行使には相当の条件が必要ともしている。 この後、ロックの論を背景として立憲主義が発展し、「国民の信託に基づいた憲法の制定経緯」「連邦主義」「立法権など三権の分立」「抵抗権に先立つ憲法改正」「統治権者の憲法擁護義務」などを明文化した世界最初の共和政原理に基づいたアメリカ合衆国憲法が1788年に発効されている。 「アメリカ合衆国憲法#アメリカ合衆国憲法の思想的背景」も参照
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