恒久設置された作品
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/04/03 16:26 UTC 版)
個展やグループ展でサイト・スペシフィックに制作設置された長澤の作品は、しばしば企画者や共同体に請われて永久保存されているが、わけても、89年にシチリアの「フィウマーラの芸術」展の際、谷川のほとりの地中に埋設した≪金の舟の部屋≫は、「目に見えなくても、地上的秩序に逆らってでも、確かに存在することを告げて止まないもの」に対する長澤の確信を驚くべき大胆な構造で具現し、永久保存されることになった。この作品は、当初、河川法違反の疑いをかけられて係争事件となった際、イタリア内外から芸術家への支持が澎湃として沸き起こったことで多くの人々の記憶に刻まれたが、10年あまりに及ぶ裁判で勝訴となり、2000年6月、最終的に作家の意図に従って土石で封鎖され、文字通り「見えない存在」としての作品が完成した。 他に恒久保存の対象となった作品としては、≪イッペルウラーニオ≫(96年、チェレ)、≪銀梅花の庭≫(97年、トルトーリ)、≪エーベの庭≫(00年、ブリジゲッラ)、≪茶室の庭≫(01年、チェルタルド)、≪平和のための庭≫(06年、カザラーノ)、≪反転の庭≫(08年、クァッラータ)等、イタリア各地に設置された独創的な庭園=彫刻のかずかずや、重力の思いがけぬ転用で重いはずの物体を軽々と吊り上げて見せる一連の≪空の井戸≫などが特記される。しかしながら、長澤自身は、多くのパブリック・アート作家たちと違って、作品が保存されることを制作の最優先条件としたことはなかった。物質・物体としての巨大作品を地上に残し、歴史に名を刻むことは、イデアという深奥の宇宙的原理の捕捉と開示をこそ望む長澤にとって二次的な関心事でしかないからである。 日本国内に恒久設置された作品には、つくばセンタービル前庭の≪樹≫(1983年)、新宿アイランドの≪プレアデス≫(1994年)、東京ビッグサイトの≪七つの泉≫(1995年)、東京・足立区役所の≪オーロラの向う所≫(1996年)、長野市南長野運動公園の≪稲妻≫(2004年)、宇部市常盤公園の≪メリッサの部屋≫(2005年、のち市内真締公園に移設)、多摩美術大学八王子キャンパスの≪ティンダリ≫(2007年)がある。
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