性能と構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/12 22:42 UTC 版)
本車は前方に2輪、後方に4輪を配する。車体前部に搭載されたエンジンから後部4輪へ動力を配分した。懸架方式は板バネを重ねたボギースプリングサスペンションを採用した。路上で時速60km、路外でも相当の運動性を持つこととされた。後方の4輪には履帯を装着し、半装軌車輛として使用することが可能である。この場合の荷重は1.5t、3分の1の斜面を登攀できることが求められた。 エンジンは九三式六輪乗用車とほぼ同一だが、一部部品に軍用の修正を施したものを搭載した。サイドバルブ・直立式直列6気筒、水冷式ガソリンエンジンで、最大出力は68hpである。のちにディーゼルエンジン型も開発・採用されており、そのためガソリン車は「九四式六輪自動貨車甲」・ディーゼル車は「九四式六輪自動貨車乙」と称される。 クラッチは商工省標準形式自動車と同型の単板乾式を採用した。変速機は前進4段後退1段で、4速こそ直結(減速比1.00)であるが、1~3速は商工省標準車よりも大幅に低速寄りのギア比に設定され、悪路での運用に備えて非力なエンジン性能を補う措置が図られていた。ただし構造はこの時代でも旧式な選択摺動式であり、当時、先進諸国で大型トラックにも広まっていた常時噛合式(コンスタントメッシュ)変速機に比べ、操作が難しく運転者に負担を強いるものであった。終減速装置は中央部に差動機を配置し、構造は減速比を大きく取れる永転螺式(ウォームギヤ)である。ウォームギヤ駆動は当時、トラック・バスに少なからず使われただけでなく、一部の乗用車にも見られた。 ブレーキは、手動とフットブレーキの二種類が装備された。手動ブレーキは収縮式で推進軸に、フットブレーキは拡張式(ドラムブレーキ)で後方の4輪を制御し、前輪にはブレーキがなかった。1930年代当時、既に自動車用ブレーキ技術として油圧式ブレーキが導入されており、ブレーキを前後輪すべてに装備して安定したブレーキ性能を得る手法が民間向けトラックでは広まりつつあったが、日本陸軍は油圧式ブレーキに信頼を置いておらず、旧式で操作も重いが故障しにくい機械式ブレーキを採用していた(このため総合的なブレーキ性能が悪く、減速比の大きな駆動系によるエンジンブレーキの活用が必須であった)。車輪には34in×6inの空気入りゴムタイヤを使用した。 運転席は幌型で上部側面とも完全に覆われており、運転手を含む3名まで乗車可能。荷框(かきょう・荷台の意)は床面積4.6m²、床高さは地上高1.2mである。荷台には三方に開閉する扉が設けられた。扉は着脱可能である。幌骨を取りつけ、綿布製の幌を張ることができた。
※この「性能と構造」の解説は、「九四式六輪自動貨車」の解説の一部です。
「性能と構造」を含む「九四式六輪自動貨車」の記事については、「九四式六輪自動貨車」の概要を参照ください。
- 性能と構造のページへのリンク